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まさおのChangeLogメモ / 2006-11-05

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2006-11-05 Sun

* ゲノム談議

・ゲノムひろば2006
http://www2.convention.co.jp/hirobag/

『ゲノム談議』なるパネルディスカッションがあるようなので行ってみた。

「一般向け」とはいうものの、特定領域ゲノム4領域主催なので、ばりば
りの研究シンポジウムに近いモノのように思う。

会場は、一般の人(家族連れも)、研究者と思われる人など、結構まざっ
ていて、途中で出ていく一般の人がいたりして、ちょっと気の毒な雰囲気
も…。

私は、ゲノムの分野には完全な門外漢なので、色々と分からない点もある
が、基本的な議論の内容が「科学と社会の接点」といったあたりを狙った
人選のようなので、結構面白い。

研究予算と研究者、新聞報道と研究、生命倫理と研究など、議論が難しい
話題に焦点を当てているものの、「ゲノム」の専門部分の話ではないため
か、素人なりに考えさせられる点もあり面白かった。

また、立命館大学の松原先生とおっしゃる先生の「研究って面白い!」を
キーワードにしたプレゼンは若手研究者を encourage することを狙った
と言われていた狙い通りの出色の出来。

最後に、生命倫理、とりわけ医学における遺伝ゲノム医療との関連が話題
になった。

生命倫理の現場レベル(病院)において、どうやってゲノム研究との接点
を作っていくか、市民社会にゲノム研究をアピールし、現場レベルの成果
を出していくための方策について、登壇されていた医学系の先生は、「ゲ
ノム研究の成果を現場に適用するためには、もっと疫学的な知見を得るた
めにも大勢の市民参加による大規模な遺伝情報プールを作って、そこから
の知見で遺伝子医療の質を上げていく必要がある」「といっても、大規模
な遺伝子プールができたとしても、すぐには実際の現場(患者)にその知
見が降りてくるわけではないので、それとのギャップを埋めながら、市民
を説得していく必要がある」と言われていた。

これには、少し違和感を持った。

他のパネリストも言われていたが、まず「自らの遺伝子をどう使うか」
「自らの遺伝子がどういうものかを知らずにすます」権利といった概念、
価値観と折り合いを付けていく必要があって、あまりムキになって市民の
説得をしても意味がないのではないだろうか。価値観の問題には口を出せ
ないだろうし、出すべきではないだろうから。

むしろ、そういった「多様な価値観がある」といったことを積極的に宣伝
していって、遺伝子・ゲノム医療の進歩に対する考えを深めていってもら
うことが先決ではないだろうか。

話を聞きながらふと、先日の毎日新聞の岩見氏のコラムを思い出した。
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/iwami/kinbun/news/20061021ddm003070041000c.html

言いたいのは、公的の立場としての価値観(医学の進歩)と、私的家庭人
としての価値観(人生観)がずれた人の存在を許容するということである。
例えば、ゲノム研究をやっている人が遺伝子プールには登録しないといっ
たことがあってもよいと思う。
そういった研究者個人が持つであろう日常の葛藤をこそもっと積極的にア
ピールし、社会から見えるところへ引き出すこと。これこそが「社会的公
益」「プライバシー」といった問題が表出する現場感覚を市民の側のそれ
との間で縮めていく一つの方策ではないだろうか。決して、人は「公益」
だけでは納得しえないだろう。

そんなことを思った、有意義なシンポジウムだった。