オブジェクト指向アプローチの核心はアプリケーションが モデルを基本として構築され、 それぞれのモデルは複数のアプリケーションで使われることにある。 同一のモデルを使用する複数のアプリケーションが オブジェクトデータベースへ移行すると、 アプリケーションは単なる同一のモデルの使い回しに過ぎなくなり、 コンピュータ化の作業の中心は個別アプリケーションの開発から 共有モデルの改良・利用へとシフトしていく。
このシフトが 新たな目標と技術を備えた全く新しい種類のコンピューティングを生み出す。 企業は業務運用プロセスを反映したモデルの開発・保守と、 新たなニーズに合わせてのモデルの拡張に専念できる。 このような業務コンピューティングに対するモデルベースのアプローチは エンタープライズモデリングと呼ばれる(図)。
エンタープライズモデリングの概念は オブジェクトデータベースにより新たな力を得る。 オブジェクト指向技術はプロシージャとデータをうまくパッケージ化するために、 エンタープライズモデリングとの理想的な相性の良さがある。 そして、オブジェクトデータベースは 大規模モデルの分散と共有のために不可欠なメディアとなる。
エンタープライズモデルはいくつもの異なったレベルで利用できる。 最も基本的なレベルでは、 データベースの通常の作業(企業情報の蓄積と検索)を行なうが、 企業の構造と業務を直接反映しているので、 従来のデータベースよりもはるかに作業を改善できる。
さらに、 エンタープライズモデルは企業の業務のシミュレーションにも利用できる。 組織構造の変更や新しい管理手順の導入、資源の再配置を試すことができ、 業務での変更の影響を検証できるのである。 このようなシミュレーションにより、 現在行なわれている単純な数値シミュレーションよりも はるかに優れた計画設定が行なえる。
最終的には、 エンタープライズモデルにより現在手作業で行なわれている作業の多くを自動化できる。 また、オブジェクトデータベースにはマルチメディアを扱う能力があるので、 マルチメディア文書に関しても電子形態で管理・処理可能となるだろう。 まとめとして、 分散型オブジェクトデータベースで運用されるエンタープライズモデルにより ペーパーレスオフィスの構想が現実のものとなるのである。