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定位チャンネル

視覚イメージから標的の位置を計算する過程は、 通常のパターン認知に含まれる神経チャンネルとは 別のチャンネルで行なわれているのではないかといわれている。 つまり、視覚イメージの中の物体を識別する際に、 視野内で物体の正確な向きや位置は重要ではない。 しかし、物体の定位に必要なデータは位置と向きである。

この2種類の分析には2つの独立した神経チャンネルが使われているらしい。 眼から脳へと向かう1組の神経繊維は外側膝状核へ向かうものと分かれて、 上丘と呼ばれている脳の中枢に伸びている。 上丘を出た神経繊維は眼球運動や頭の向き、 姿勢の調節などを扱う運動制御システムと結合しているようである。 また、上丘は視覚情報を受容する皮質からも情報を受け取っているらしい。

この上丘が環境中で対象を定位することに関連すると思われる有力な候補である。

このチャンネルのニューロンが電極により活性化すると、 ある種の頭部運動や姿勢の調節が起きる。 さらに視野の特定部分と関連したニューロンが刺激を受けると、 その方向に向きを変える。

上丘の細胞は主に標的を動かすことで活性化される。 視覚・聴覚・触覚から送られた情報は物体を定位するのに役立っている。 また、身体の向きを制御するのにも利用されているようである。

以上の2つの主要な視覚チャンネル(パターン認知・定位)の内の一方が壊れたら、 どんなことが現実に起こるのだろうか。



Masao Takaku 平成11年3月12日