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本が好き!プロジェクトによる献本書評第二弾)
ブログが「炎上」する現象の紹介と、その対応策について述べた本。
著者はライブドアの役員としてブログを運営してきており、特にライブド
ア騒動を受けて主要幹部が逮捕され、各人のブログの大半が閉鎖を余儀無
くされていく中で、唯一ブログの更新を続けていった過程を契機として、
多くの中傷、荒らしといったコメントを受けながらも運営を続けていくこ
とそのものの意義やその対処法の違いにより、ブログが炎上してしまうの
か、鎮火するのか、その違いを見極めたいとの思いから、多くの具体的な
事例を取り上げ、解説を加えている。
本書には新たな概念の提示や目新しい提言が盛り込まれている訳では無い
が、ブログ普及以降数年の現状を良く整理した一冊として貴重な資料にな
るのではないかと思う。また多くの事例を紹介しながら解説を加えており、
さらに、実際に炎上に遭遇した政治家など複数の視点からの関係者へのイ
ンタビューを交えて、この分野に詳しくない人にも理解しやすいよう配慮
されているように感じた。
ただ、日頃から多くのブログを巡回し、様々な議論、論争等を読んでいる
身としては、やや物足りない印象を受けた。もう少し論じることはある気
はする。ま、出版媒体の制約という形ではしょうがないかなという気もす
るが。。。
現在は、ブログという概念が新たに登場して以降、様々な事例から「炎上
する」といった比較的新しい用語が生まれ、整理されていく過程にある。
ブログというメディアの概念自体は現在のWebの貧弱なアーキテクチャに
基づいた概念として普及したため、おそらく今後長期的に見れば、それほ
ど長生きしないだろうと思われる。しかし、「炎上」を産むのは人と社会
による要因が大きく、長期的に見てもそれほど変化することは無いのでは
ないかと思う。そういう意味では、ブログメディアに付随しているかに見
える「炎上」という概念/現象自体とは、存外長く付き合っていかざるを
えないであろう。
ひとつだけ違和感があった点としては、ライブドア社の強制捜査から堀江
氏逮捕に至るまでの堀江氏の「ほりえもんブログ」のケースを炎上として
捉えていた点だ。
cf.
http://web.archive.org/web/20060412222119/http://blog.livedoor.jp/takapon_ceo/
私見では、このケースはマスメディアによる大規模な報道や、ブログ運営
者であった堀江氏自身の逮捕・身柄拘束に至った時点で、ブログ炎上といっ
た枠を越えたモノであったし、ブログのコメント欄閉鎖もなによりシステ
ム負荷などの点から加えられた措置であったと理解している。そういう意
味ではむしろ、Webメディア登場以前からあるような、事件・事故関係者
への中傷の手紙や脅迫電話といった現象や、マスメディアの取材攻勢を通
じたメディアスクラムといった現象との対比が必要ではないかと思う。そ
ういった現象同士の相関を通じて理解していくことで、ブログという媒体
の持つ特性が明らかになると同時に、理解も深まる方向であろうと思う。