小学校学級におけるブラジル系児童を描いたエスノグラフィ。
たまたま図書館で見かけて気になったので読んでみたのだけど、結論から
言えば、2007年最高の一冊だろうと思う。
筆者はおよそ3年間、小学校高学年のブラジル系移民の児童の様子を中心
に、小学校内の主に日本語教育特殊学級にはいって観察し、その報告とし
て、多くの児童から構成されるクラスそのものの社会性を丹念に描いてい
る。
小学校内部での教師および児童の総体によって成り立っている学級運営、
クラス内での個々の児童の立ち位置、ブラジル系児童に代表されるマイノ
リティの立ち位置、それらを総合的に描き出すことに成功しているように
思う。
私自身、小学校時代ははるかかなたになりつつあるが、記憶の片隅にある
日本の小学校学級そのものが持つ攻撃性が、透けてみてくるような迫真の
描写と、現場の説得力に衝撃を受けた。
子どもたちは受動的な存在ではなく、他者との関わりの中で多くを学ぶと
ともに、その立ち位置の中で自身のアイデンティティを発見し、発掘して
いくということがよく分かる。また同時に、参与観察者としての著者本人
の振舞いの難しさと、その立ち位置も問われていることもよく分かる。
なによりも現場そのものの描写が秀逸だが、現場の描写から導かれたまと
めとして、最後には移民系児童への教育環境の改善に向けた提言も挙げら
れており、それらも説得力あるものとなっている。