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まさおのChangeLogメモ / 2007-03-10

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2007-03-10 Sat

* 第32回ディジタル図書館ワークショップ

http://www.dl.slis.tsukuba.ac.jp/DLworkshop/old/DLW32/DLW-program.html
就職して以降はあまり真面目に参加していなかったけど、神崎さん効果か、
ここ数年の低調を上回る盛況で、パネル討論も白熱していて良かったよう
に思う。

で、討論の内容については発言するチャンスを逃したようなので、感想と
して、ここにメモしておく。

まず、討論の大前提の「相互運用」の定義が明らかにされなかったため、
私の見た感じでは、人によって別々の話題に対し話し合っているという形
になってしまったのは、もっとも残念な点だったように思う。
# そもそも「相互運用」という語はこの種の主観的理解に陥りやすい用語
# なので、できるだけ使わない方が良いように思う。

討論の範囲では当面は「横断検索」あたりだけを念頭に置こうという意図
のようだが、情報要求など利用者の具体的なイメージがあまり明確でない
モデルのもとに話し合うことは、リソースの疲弊を招くだけで好ましくな
いように感じる。

一方、個人的には、図書館資料・博物館資料・文書館資料などのそれぞれ
の特性の面からの違いという点はくっきりと打ち出され、明確になったの
は収穫だったと思う。つまり、博物館・文書館における資料を扱う困難さ
に比べれば、相対的には図書館はその資料の特性から扱いやすい面があり、
その拠って立つ土台には伝統があり、サービスのための重要な資源となっ
ていることは確かだ。

その上で、まず目指すべきは、博物館・文書館との館種をまたいだ「相互
利用」サービスではなく、自組織内に蓄積された、異種異分野資料間の統
合利用の促進ではないかと思う。例えば、昨日の例で言えば、国立教育政
策研究所教育図書館の図書資料・論文索引資料・個人文書・教科書といっ
た雑多の資料群を統合して利用できるようにすることが利用者の現実的な
情報要求であると見ることはある程度合理的ではないかと思う。また、国
立国会図書館でも憲政資料といった図書資料の範疇から外れたものを既存
の図書館資料の枠組みにおさめるのに苦労しているとか、他の大学図書館
の現場の方からもあちこちで同類の話題が挙がっていたのは示唆的である。
つまり、自組織内でうまく回すことができていない確立されていないモデ
ルをいきなり他組織とつないで回していこうとするのは、現在の人的リソー
スに貧窮しはじめている図書館を始めとする情報系組織では苦しい展開で
はないかと思う。
cf. 教育図書館
cf. 国立国会図書館 憲政資料

であればこそ、今回のパネル討論でも大いに話題になった、Web API的な
方向性において、まず図書館はその内部に有している豊かな「図書館資料」
に関する資源を率先して公開すべきである。これは既にARGの岡本さんが
提言しているし、今回の討論で図書館が豊かな基盤を有していることは明
らかになったのでもあるし、速やかに提供できるリッチなデータを提供し
様々な実験に活用できる方策を探った方が近道だろう。いったんデータが
提供されれば、現在のAmazon APIで見られるように、様々な形でのマッシュ
アップする形を実験的なサービスとして提供したがる人はそれなりにいる
だろうし、それこそが機関横断的な共同利用としての展開にも望みをつな
ぐことになるのではないだろうか。
先日公開されたマッシュアップ「所蔵図書館マップ」はその大きな先例に
なるだろうと思う。
cf. http://d.hatena.ne.jp/arg/20070309/1173407400
cf. http://myrmecoleon.sytes.net/map/
cf. 岡本真. 「Web2.0」時代に対応する学術情報発信へ : 真のユーザー
参加拡大のためのデータ開放の提案”. 情報管理. Vol.49, No.11, 2007,
pp.632-643. DOI:10.1241/johokanri.49.632

最後にパネル討論に参加された方およびコーディネータの宇陀先生に敬意
を表したい。特に、このような他機関がからむ問題は利害関係が衝突する
場合も多く、公開の場では率直な意見交換がおこなえないこともあるが、
前向きなムードと真摯な議論の場が形成されたことは大変有益であり、今
後に向けても重要だったと思う。
個人的にも大変勉強になりました。ありがとうございました。