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(1) TeX は書籍組版用のシステムである。
(2) 書籍組版の世界と云ふのは、まさに「バッドノウハウ」の魔窟であ
る。専門家以外は全く手出しできない。この意味で、書籍組版は「恐ろ
しく奥が深い」世界である。
(3) TeX は優れた設計・実装を持つ。従来は専門家以外は手出しできな
かつた書籍組版を、一般の人でも何とか使へる程度に一般化した。それ
なりに使ひ易い環境を提供した。その証拠に、組版のノウハウを持たな
い人でも、たつた数日間学習しただけで、非常に読み易い紙面を実現で
きる。特に、欧文・数式の読み易さは、そこらの組版技術者が裸足で逃
げさうなほどの高品質である。つまり、TeX は、書籍組版と云ふ「恐ろ
しく奥が深い」システムに対する、それなりに優れた「グッドラッパー」
である(グッドラッパー:→バッドノウハウからグッドラッパーへ)。
(5) 複雑怪奇なのは TeX ではなく、書籍組版である。悪いのは TeX で
はなく、書籍組版である。
(6) 書籍組版の複雑怪奇さを指摘せずに、TeX を「バッドノウハウの温
床」とするのは、適切でない。実際のところ、TeX は書籍組版の持つバッ
ドノウハウの大半を解消してゐる。むしろ評価されるべきだ。
(7) (TeX ではなく)書籍組版を「バッドノウハウの温床」とすること
については、異論なし。
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