副題に「心理学の神話をめぐる冒険」とあるとおり、心理学にまつわる
「神話」を批判的に解説する本。8つの学説やそれの元となった逸話をと
りあげ、疑問を投げかける。タイトルにある「オオカミ少女」の逸話は8
章のうちの1章にすぎず、様々な話題が取り上げられる。
なるほど確かに、オオカミに育てられた少女たちという存在は非常に稀で
あり、言語機能の発現といった、人間が持つ機能の解明のため、発達心理
学や言語学上の学説にも大きな影響を与えたと思われる。しかし、心理学
実験がヒトを対象にして行われる以上、追試を行うことが困難であったり、
倫理上、不可能であったりするケースも多いので、それが原因で都市伝説
化するという独特の現象だという気はする。
医学においても都市伝説が多いのはそれも起因しているのでは、という気
がする。
とくに研究においては、分かりやすいストーリーを作ることが求められる
ので、神話となるほどのストーリーを作り上げる機会はそうそう無いもの
の、最近でも、データマイニングの有名な事例として知られていた、「ビー
ルとおむつ」の逸話が都市伝説に過ぎなかったという話もあり、捏造や誇
張めいた話へと展開してしまうことがあったとしても不思議ではないかな…
という気はする。