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まさおのChangeLogメモ / 2009-07-20

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2009-07-20 Mon

* 新しい時代の共同研究の形式と手法

こう書くと笑われるかもしれないが、Web2.0時代には新しいツールが次々
と生まれ、今の時代の共同研究ではそれらをうまく活用して生産的な研究
活動を推進する方法論が必要となっているように感じる。
とくに、旧来型の単なる組織や機関の壁を越えたプロジェクト研究を推進
していくには、情報共有と緊密なコミュニケーションが欠かせない。共同
研究における新しい情報ツールの活用方法を共有することがわれわれすべ
ての利益となるはずだ。

CRES研究プロジェクト(*1)は2007年8月に最初の会合を持った。その前身
であるIRCEプロジェクトまでさかのぼれば、その一年前の2006年3月に最
初の会合を持ったのがその起源だ。IRCEプロジェクトは、当時、修士時代
の研究室同窓でひとりは情報検索分野に、ひとりは認知科学分野にと、まっ
たく別々の研究室を選び、博士課程で別の大学に進学した2名の若手研究
者が、お互いに現在は「情報検索」を題材として研究していることを知り、
せっかくだから情報交換しようと思って、メールのやりとりを始めたこと
に端を発した。
*1: http://cres.jpn.org/

最初の会合はまずは単に近況報告で終わり、研究の話もそこそこに居酒屋
に繰り出したが、2ヵ月後に名古屋で行った会合ではお互いの研究紹介を
行った。そこでは、お互いの研究の類似性と有用性とが見出されたため、
ぜひ継続的に勉強会なりで交流していこうというやり取りが行われた。

また、当時図書館情報学分野の講座に移籍したばかりだった、知り合いの
認知科学分野の若手研究者も、メンバーに加えた形で4名で勉強会を開き
たいという申し出があり、新しい共同研究者として、その一名を加わるこ
ととなった。名古屋からの帰りの新幹線の中で議論をしている中で、メン
バーが増えるのだから、と情報共有を思い立ち、まずはMLとWikiを立ち上
げたほうがよいかもしれない、ということになった。
その場で、以前に一度だけ使ったことの会ったQwikを使うことを決めた。
クローズドなコミュニケーションとお互いのやり取りが整理して残せる
Wikiとの融合形態がとても気に入っていたからだった。当時すでに、勉強
会で使った資料PPTや参照論文PDFをお互いに共有することが次の研究活動
につなげていく上で重要だと感じたからだった。

まだ会の名称すら決まっていなかったが、IR="Information Retrieval" +
C=Cognitive science + E=Evaluationといういくつかのキーワードを安直
につなげて、IRCEと命名した。命名についての議論をメールで了解するよ
りも早く、その名称でMLを立ち上げた。なによりもメールでのやり取りを
ログとして共有し、その共有された環境の中で新しいメンバーを迎えた議
論をしたかったからだ。

まずはメンバー登録だけを済ませた状態で、Qwikサイトを立ち上げ、共同
研究の会の性格をとりあえずのメモとして登録し、第1回打ち合わせの際
の議事メモをページとしておこした上で、メールを送り、資料を登録して
もらうよう頼んだ。すぐに返信があり、立ち上げておいたWikiに資料を載
せてくれた。
Qwik上のサイト

その後も、月に一度程度の例会のたびに、Wiki上に各打ち合わせ日程ごと
にページを立ち上げては資料や議事メモを書き込み、必要に応じてSkype
やYahooメッセンジャーやでのオンラインミーティングを重ねてきた。
また、研究成果となる研究発表に向けては、下書き用にGoogle Docsを使っ
て、ラフなドラフトを共同執筆しながら、清書・校正時にはLaTeXでのマー
クアップ原稿をCVSで版管理しながら使ってきた。これらの原稿や図版類
の最終版はCVS上またはWiki上の成果リスト上に載せておき、研究メンバー
全員が常にアクセスできるようにしてある。また、研究成果にとどまらな
い研究紹介のための、リーフレットやロゴ画像も同様にWiki上で共有する
ようにしている。

当初、Qwik上にすべての情報を集約して情報共有できるかと思ったが、残
念ながら、いまのところ、これらのプロセス全体の完全な集約は難しく、
必要に応じていろいろなツールを使っていかねばならない。とくに、Qwik
のアクセス権限の設定はQuickML由来の独特なモデルなので、MLにCcしな
がら外部のひとたちとコミュニケーションを取ることが難しく、別の外部
連絡用MLも立ち上げている。ちなみに、こちらのMLに流れたメッセージに
も常にアクセスできるようにするため、Webにアーカイブを同期するよう
設定しており、メンバーで共有している。
また、実験時に発生するビデオや行動ログデータは、大容量となる(80時
間、500GB程度のデータ量である)ため、サーバ上に置いてもネットワー
クアクセスに時間がかかってしまうため、ポータブルHDDにコピーして、
そのまま全員の手元でアクセスできるようにしている。

なお、以下はこの研究プロジェクトで3年間にわたって使ってきた情報共
有ツールである。いまなら、もうすこし良いツールが選べるかもしれない
が、参考までに挙げておく:

[コミュニケーション、情報共有、議論]
・Qwik
・Yahoo! Messenger (IME)
・Skype
・Google Docs
・Majordomo
・mhonarc

[データ共有]
・ポータブルHDD
・SSH(Linuxサーバへの遠隔アクセス)
・Qwik

[原稿執筆]
・Google Docs
・CVSバージョン管理ツール
・pLaTeX2e

[スケジュール管理]
・Qwik
・ちょー助

[外部広報]
・Pukiwiki
・Youtube
・Majordomo

※このような共同研究の内実を書こうと思ったのは、昨年10月のオープン
アクセスデーのセミナーでMyOpenArchiveの坂東さんに、プロジェクトに
おける共同執筆活動の現状を話したとき[2008-10-14-1]が最初の契機で、
そして、だいぶ時間を経て、先月の情報メディア学会でのARG岡本さんが
特別講演(id:arg:20090629:1246283123)の中で研究のプロセスの公開が
重要となってくるとの話を聞いたからだ。
ちなみに、先日のCSI報告会の感想[2009-07-13-1]のなかでも「情報共有」
をキーワードとして挙げたのは以上のような理由によるということを付記
しておく。
Referrer (Inside): [2009-08-23-3]