逐次報告は佐藤翔氏による
詳細なレポートにお任せして、職場向け観点からだ
けど、注目点と感想の部分を抜粋で載せておく。
・報告者: 高久雅生
・開催日時: 2009年7月9日(木)、7月10日(金)
・参加会議名: 平成20年度CSI委託事業報告会(コンテンツ系)
・開催場所: 学術総合センター2階
・URL:
http://www.nii.ac.jp/irp/event/2009/debrief/
・報告:
昨年度のCSI委託事業(機関リポジトリ構築支援事業)報告会として、全
国の大学図書館・大学共同利用機関法人が参加して、NIIにおいて報告会
が開催され、全国の大学図書館を中心として多数の参加があった。
以下では報告者およびNIMSでのリポジトリ構築に向けた観点から、発表の
傾向、注目された機関・発表について述べる。
<共同リポジトリ>
初日午前の機関リポジトリ構築の報告セッションでは5件中3件の下記報告
が、共同リポジトリ方式による機関リポジトリであり、リポジトリ事業の
継続性・負荷軽減の観点からか、その成否が注目を浴びているように思わ
れた。
・HARP(広島県)
・O-AIR(岡山県)
・CRFukui(福井県)
また、2日目に発表のあった島根大学・遺跡資料リポジトリ、東京工芸大
学による教育系リポジトリは、主題リポジトリの構築を目指すプロジェク
トであり、メタデータスキーマの設定を主要館で行った後、共同でのデー
タ作成を目指し、最終的にポータル的サービスを構築という、それらでの
運用手法はNIMS eSciDocにおける材料主題リポジトリの展開にも十分に参
考になるものと思われる。
とくに島根大の遺跡資料リポジトリは中国地域の遺跡人文報告書資料リポ
ジトリを共同構築する点で共同リポジトリの一環であるだけでなく、研究
現場に近いところで生産される資料の収集・保存を目指すという、
eScienceとしての側面からも大変興味深いプロジェクトであった。
<聖学院大学・SERVE>
XooNipsのもつ「個人領域」機能を使ったテスト運用や、プライベート処
理機能など、小規模私立大学ながら、比較的eSciDocとも近い機能を持ち
合わせたもののように思えた。XooNipsの開発が研究プロジェクト主導で
ある分だけ、eSciDocが指向するeScienceともかなり近い領域を狙った機
能が多数開発されているのではないかとの感想を持った。
<金沢大学・KURA>
雑誌論文のエンバーゴ自動公開処理機能、研究者IDによる研究者総覧連携
機能などについてポスター発表していた。NIMS eSciDocでも開発を予定し
ているこれらの機能の円滑な導入を目指す上では折に触れて参考としてい
きたい。
<千葉大学・CUWiC>
衛星画像データベースをリポジトリ連携させたツール CUWiCの紹介がポス
ター発表されていた。国内大学でのeScience指向のリポジトリとしては先
駆的な試みであり、ソーシャルタギング機能の付与による発見探索支援機
能の付与は試行的サービスながら、参考になるかもしれない(eSciDocに
おけるPubManではすでにローカルタギング機能が実装済みで、メタデータ
発見支援としてのタギング機能が提供されている)。また、eSciDocソリュー
ションのひとつであるFACESにおけるスキーマ等の運用としても、先行事
例として参考とすべき点はあるように思った。
参考:
http://narihira.ll.chiba-u.jp/
<千葉大学・IRコミュニティのための教育用システム提供>
昨年度より開始された千葉大を代表機関とするプロジェクトであり、リポ
ジトリ運用の教育用ツールとして操作機能を気軽に試せる、いわば「お試
し用ツール」を構築する試みを行うとのポスター報告があった。その場で
非公式に話した限りでは、DSpace, XooNips, E-Repositoryといったすで
に実績のあるリポジトリソフトウェアに加えて、Fedora/eSciDocについて
も検討を進めているとのことで、相互に連携を取りたい旨、要望を伝えら
れた。NIMSもしくはMPDL側でサービス運用を予定している、試行版サービ
スのうちの仮想サーバの一つを提供することで、まだリポジトリサービス
に乗り出していない外部機関にアピールしうるテスト用サポートサイトと
して、試行版eSciDocを共同で構築する試みはお互いにとって有用ではな
いかと思われる。
<共有アクセス解析プロジェクト・ROAT>
千葉大を代表機関とする、リポジトリアクセスログの共有アクセス解析プ
ロジェクト。NIMS eSciDocとして提供予定のアクセス解析サービスも
AWStatsを主軸としたものであるため、容易に連携できるよう、ROATプロ
ジェクト側成果のオープンソース化を要望し、前向きに相互に連携しなが
らやっていきたい旨、返答を得た。
参考サイト:
http://roat.l.chiba-u.ac.jp/xoops/
<各種研究所系機関担当者との懇談>
多くの大学のリポジトリ担当者に加えて、NIMSと比較的類似した立場にあ
る研究所系機関担当者と懇談の場を得ることができた。具体的には、核融
合研究所、海洋研究機構の2機関であった。各機関での著作権処理の概要、
サーバ運用の実態について、詳細な情報を意見交換して相互での運用を参
考例として、今後とも連絡を取りたい旨伝えることができた。
【その他感想】
共同リポジトリ系の報告が増えていたことによるものか、個人的には今回
の報告会の発表中で非常に印象に残ったキーワードは「情報共有」であっ
た。DRFですでに使われているML+Pukiwikiといった形式にとどまらず、
HARPではGoogleグループを、O-AIRではCMS (Plone)を、他の組織もウィキ
ソフトウェアやMLを使った情報共有に基づいて、リポジトリ構築の際にか
かわる業務や、最新動向を情報共有していくことに貪欲になっているよう
に思う。これは、図書館の中での情報共有や業務引き継ぎがどれくらい進
んでいくかを、単なる職場の枠を超えて共有する必要が出てきているから
こそであるように思う。研究の現場にいる科学者も実は、このことを常に
求められるようになって久しい。ライブラリアンが科学者の情報共有手法
と近い手法をとるようになってきたのは、「研究活動の理解」という、実
はリポジトリ事業にとって、鶏・卵的に重要なことのように感じた。今後
のこの種の情報共有が図書館サービスや研究者に対するサービスにどのよ
うな変化をもたらすのか、注視していきたい。