グールドによる宗教急進派と進化論との闘いを巡るエッセイ。NOMA(非重
複教導権)原則なる概念を導入して、科学・宗教間での共存を訴える内容。
自然科学と宗教とにはお互いに犯してはならない領域が存在し、それぞれ
がそれらを尊重しなければ、お互いに不幸を呼んでしまうということを訴
えている。
夏頃に読んだドーキンスの「神は妄想である」と対をなすような議論で興
味深かった。
が、本書は基本的には、アメリカだけに局地的に存在するキリスト教原理
主義の政治的影響力のためだけに書かれた本であり、あまりにもローカル
な話題にすぎるのではないかという気がする。
そういった意味で、日本の読者向けとするために、最後の4分の1くらいを
訳者解説にあてなければならなかった出版社側の苦渋もわからないでもな
いが、いかんせん主題そのものに魅力が欠ける。
アメリカにおける進化論を巡る議論を歴史的推移から丹念に描いている点
は、参考になって面白く読めたので良かったけど。