鈴木宗男事件において外務省側のキーマンとされた人物による事件回顧録。
事件の背景説明を交えながら、捜査、取り調べなど、勾留中の様子を描い
ている。
特に、取調べをした検察官による「国策捜査」という言葉を紹介し、検察
特捜部の論理による事件や捜査のあり方を批判している。
鈴木宗男・田中真紀子による確執に端を発した騒動は、ワイドショーネタ
となって、世間を相当に騒がせたため記憶にあるが、彼の人がどのような
扱いを受けていたかはよく覚えていなかった。
確かに検察が事件そのものの構図として採用した、学会出張・招聘のため
の支出を北方領土支援委員会の予算から計上したケースというのは、それ
ほど奇異な感じはせず、普通のケースだろうと思う。大学や研究所でも工
夫して、学会運営のための経費を捻出するというのは、普通に行われてい
るのではないかという気がするので、むしろ、硬直化した会計制度の不備
の方が悪ではないかという気がする。これらが言い掛かりに近く、まさに
国策捜査のための立件だというのは、著者の言う通りだと思う。
あと、インテリジェンスに関わる活動については、その一端を書いていて
興味深くはあるものの、実態はよく分からず。本人の自慢話らしく見える
ために、かなり歪曲して描いているのではないかとの印象も受ける。