著者は、生活保護の実務経験を持ち、福祉の現場で働きながら、「生活保
護110番」というサイトの運営もしている。
cf.
http://seiho110.jp/
生活保護制度の現状を解説したうえで、いくつかの事例とともに、「自己
責任論」や「水際作戦」等の表層的な批判を超えた立場から提言を行って
いる。
特に、生活保護行政では、これまで意識されていなかった、被保護対象に
おける児童福祉の問題を中心的に取り上げているのがとても印象的だった。
逆に言えば、そのあたりから攻めないと、すぐに自己責任論にのみこまれ
てしまう現場の葛藤が描かれている。
また提言としては、「自立支援」を軸とした生活保護行政の変革を訴えて
いる。これもまた納得。
事例として挙げられているものでも、苦しく先の見えない生活の痛切さと
ともに、生活保護の現場の苦悩をよく伝えているように思う。
なお、本書はタイトルにあるワーキングプアとの対比を主軸にしたもので
はなく、生活保護を主題としたものだった。ので、以前読んだ『ワーキン
グプア』と対比させて読むと良いのかもしれない。cf.
[2007-10-01-1]