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まさおのChangeLogメモ / 2008-07-21

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2008-07-21 Mon

* ヒューマン2.0 [book]

シリコンバレーにおける日米連携を専門とする本業をもつかたわら、ブロ
グによって名が知られた著者による「シリコンバレー紹介」といった趣き
で、著者が見たシリコンバレーの空気や人々をひたすらに紹介している。

占領政府があった影響からか、アメリカの労働慣行および家族観といった
ものは、現在の日本のものととてもよく似ているようにおもう。それをベー
スに考えた場合、シリコンバレーは、著者が紹介するとおり、一見したと
ころ奇異なベンチャーにあふれた環境のように思う一方で、当然ながら、
そのアメリカ的な雰囲気にもあふれているように思う。
その意味では、「ヒューマン2.0」と題した「新しい労働環境」とはまだ
過渡的のようであって、それをそのままとらえてよいのかどうか、はっき
りとしないように思える。

全体の構成としても、著者はブログの延長のような書きぶりに徹した文体
で、ブログ読者でなければ、これについていくのはなかなか厳しいように
思う。
ただ、いったん慣れれば、ブログと同様、日常とオンの世界をとりまぜた
この文体が「シリコンバレー紹介記」としては優れたものとなっているこ
とがよく分かるので、タイトルの付け方を間違えたのではないかと思う…。

* ホモ・フロレシエンシス [book]

別名「ボビット」とも呼ばれる、インドネシアの遺跡から発見された異例
の古人類化石の発掘譚。これまでの人類進化の学説上の謎を解く鍵となる
ような大発見であることを解説した上で、発掘にまつわる背景と、研究遂
行上での政治的・学説的な対立構造によるさまざまな葛藤を描いている。

発見された人骨は現生人類からかなり遠縁の旧人類と見られ、しかも、現
生人類とくらべると著しく小さな体格や、小さな脳頭蓋の面積などの面か
らも、新たな人類種であると分類したものとのこと。

著者はオーストラリア側から、オーストラリア大陸への人類の移住の謎と
いうResearch questionをいだいてインドネシアでの発掘調査を進め、そ
こににふってわいた、さらに大きな研究課題を提示する大発見の模様を、
それに関わる努力とともに伝えている。

後半は、インドネシア・オーストラリア間の国際研究プロジェクトの政治
的主導権争いをめぐる話題が中心になっており、大規模なプロジェクトに
大発見がからんで、かなり難しいことになっている模様をつたえる。

長年インドネシアでの人類学研究をおこなってきた監訳者による解説が、
第三者的視点から解説していて、良い感じ。

また、随所で大学院生を含む共同研究者の仕事に触れるさまは、大きな研
究プロジェクトの研究代表者としての責任感を感じさせ、印象的だった。
Referrer (Inside): [2009-01-03-1]
Referrer (Inside): [2008-07-31-1]