最近、話題になっている日本における医療危機の現状を解説した本。
医療費高騰が財政再建の負担になるとして、医療費抑制策を続けてきた、
これまでの医療行政、医療政策のあり方を厳しく批判している。
昨年、マイケル・ムーアの『Sicko』を見たときに愕然としたように、日
本の医療は急速に米国のような医療格差社会のそれに近付いている。現に
昨年の報道にあった、病院からの患者置き去り事件という、まさにSicko
に描かれたとおりの事件が起きている。
医師の側からの発信はともすれば、身贔屓となりかねないことを割り引い
ても、低福祉を目指す現在の政策への批判としてはよく出来ていると思う。
構成面では、公共事業との対比の部分に比重が置かれている部分があって、
現実の医療政策の解説がやや薄い印象もある。このあたり、もうすこし深
い解説でもよいかな、と思った。