アメリカの貧困層の現状と解説しながら、新自由主義政策が全盛となった
現在のアメリカの姿をつたえる。
とくに、医療制度、軍事産業、教育制度といった場所で苦闘する貧困層と、
それをささえる制度面での格差を描いている。
とくに、新自由主義における経済政策がその推進剤として、貧困を軸とす
る被搾取層をつくりだし、再生産する様子を批判的に伝えている。
昨年に『Sicko』を観て以来、アメリカにおける新自由主義政策の悲惨さ
に驚き、それとともに、日本におけるそれがかなり酷似した姿になりつつ
あることに、さらに背筋の寒い思いをしてきたが、本書も、それと類似の
世界を描いている点で興味深い。
『Sicko』で描かれていた、医療制度によって貧困層に転落する家族や、
不足する給食制度の問題などをとりあげるだけでなく、911以降の軍産業
と貧困層との関連を強く描いているのが特徴。
貧困社会の問題として様々な話題に触れている都合からか、全体の構成が
やや散漫になっているのが難点だけど、個別の事例はとても興味深かった。
日本もいずれこうなるという実感をあらたにして読まなければならないと
思う。。。