アレクサンドロス大王により計画され、プトレマイオス朝によって保護さ
れた多国籍都市アレクサンドリアの勃興から衰退まで、科学史に残る哲学
者たちの物語をからめながら、約600年の歴史を残す。
プトレマイオス朝がエジプト文明の流れを汲む形式で建造したアレクサン
ドリアを、ギリシア文明と調和させてヘレニズム文化を花開かせた過程と、
近代科学と並び立つともされる芸術・科学の街の様相を伝えようと描いて
いる。勃興期のアリストテレスの影響から、エラストテネスやユークリッ
ドといった全盛期の哲学者たちの交流と、図書館とムセイオンの影響を時
代を追って取り上げている。
残念ながら、いまに伝わる史料の少なさから不明な点も多いのだが、これ
ばかりは衰亡の影響という形での哀しさを感じるほかない。。。
著者はプトレマイオス朝の文化振興策を高く評価していて、裏に隠れてし
まってあまり表に出てこない都市計画と宗教文化を通じた統治策の視点は
興味深かった。
その一方で、キリスト教と異教徒との争いが結果的に都市の衰退を進めた
という点ををはじめとして、意外と知らない事実も多かったので、とても
興味深く読めた。