ドイツ行きの機中にて読了。
先日来読んできた大岡昇平の『レイテ島戦記』
[2009-01-09-1]、『俘虜記』
[2009-01-25-1]とシリーズをなすような著者の戦場体験が色濃く出た小説。
敗兵のうちの落伍兵を主人公として、ゆるやかな死に向かう中での狂気を
描く。餓死・病死による脱落者が大量に出現した中での人肉食者を主題と
して、極限での罪の意識を描いている。
これまで読んできた大岡昇平の戦場ものシリーズからすると、唯一フィクショ
ンものであることもあり、もっとも幻想的な雰囲気がある。が、いままで
に他のものを読んでからだったから、意外と文体も変わらず、それまでの
雰囲気のままで読むことができた。