徹底したコスト比較を全面に出した環境問題へのアプローチを論じた本。
いわゆる環境ロビー団体の主張に真っ向から反論する内容で、主題もエネ
ルギー資源枯渇、水問題、食料危機、地球温暖化、農薬と幅広い。
本業は経済学者のようで、その観点から、環境問題に対してはコストを度
外視した政策がとられてはいないかという点に注力した主張を繰り広げて
いる。
幅広い内容で大部の主張をくりひろげつつも、参照文献で一次資料を紹介
しながらの記載なので、それなりに説得力はある。ただし、紙幅の都合か
らか、参照文献の正確な書誌情報そのものはWeb上で提供する形を取って
いるので、そういった配慮もあまり関係なくなっているのは残念だが…。
cf. 出版社のサポートページ:
http://www.bunshun.co.jp/se/
cf. 訳者によるサポートページ:
http://cruel.org/kankyou/
筆者が前半で述べている人類の明るい未来像は斬新で大変興味深く感じた。
ただし本書の記述は、環境ロビー団体が巨大な影響力を保持している欧米
を前提としていると思われ、それほどの力を持ちえていない日本とでは、
本書の意味合いも変わってきそうな気がするし、ある意味では、欧米の環
境団体の影響力を中和する目的で記載したものだとおもうので、あまり日
本の現状に対しては参考にならない雰囲気も感じる。
また、経済合理性からの視点での環境問題へのアプローチは、日頃の日常
的なレベルから捉えるのとは相当に違う観点なのではという気もする。局
所的・個別的な問題へはこの方向からではアプローチできないと思うので、
別の視点の提示が必要そうという気がする。
さらにそもそも、そういった合理性を人間が実現しうるのかについては、
やや限界を感じなくもない。逆にいえば、著者の主張はそれだけの論理整
合性・合理性を信じうる欧米特有の空気に独特なものではないかという気
がしなくもない。