初期人類の進化圧は狩猟行動ではなく、捕食されるという事実によるもの
の方が大きかったとの主張。
従来の定説となっていた狩猟行動に進化の原因を求める「Man the Hunter」
説を否定し、その逆で、捕食者に対する適応行動こそがヒトを「Man the
Hunted」として進化させたのではないかという説を、想定しうる捕食者の
生態や、初期人類化石に残る被食の跡、現生霊長類の行動とにもとづいて
論証していた。
ヒョウとか猛禽類の一種など捕食者の立場から見れば、人類はお手頃な食
べ物だったというのは、言われてみれば当然のことではあるけど、あらた
めて言われるまでなぜだか忘れてしまう事実かも…。
ということで、大変面白く読んだ。
あと、「Man the Hunter」仮説がキリスト教的原罪に由来しているという
のも、西洋流の教養という話題で興味深かった。
ちょっと気になったのは、やや唐突にブッシュ政権への皮肉やジェンダー
論の展開などが混じる点。このあたりは一般書向けということでエッセイ
風に加わっていて、全体の展開とあわせて整理されていればなあと思った。
あと、注釈・参照文献を本に付けずにWeb上だけに置くのは勘弁。書籍と
しての価値を半減するので、やめてほしい。
cf. 化学同人のサイト上にある注・参照文献:
http://www.kagakudojin.co.jp/library/ISBN978-4-7598-1082-0.htm