京都の暴走族に取材した結果から、暴走に興じる若者たちの実態を描くと
ともに、その背景にあるものを分析した好著。
1984年刊ともう23年前の出版だが、暴走族そのものがブームとなり、一番
活発に活動していたころの勢いも感じる。
世界的にもまれな日本の「暴走族」ムーブメントがどのようにして生まれ
たかを、以前のモーターサイクル族の歴史や、社会的イメージの醸成によ
る「演出」の影響を通じて描く。
ありがちな「受験競争からの落伍」「寂しさゆえの暴走」といった、一般
社会でありがちな分かりやすい解釈を排し、現場に即した暴走族論から、
暴走活動そのもの魅力と、マスメディアがムーブメントを劇場化・演出す
ることによって成立した類型化とその模倣という図式を描きながら、「魅
力-リスク」論や、「類型化と模倣」による様式化など、社会の中での立
ち位置の模索を分析している。
ただ、惜しむらくは、マクロな「暴走族とは何か」という疑問にこたえる
分析が主となっているため、暴走族との取材の過程のフィールドノートや、
個々の若者の活動を詳細に追うといったミクロなレベルのルポは、中心と
はなっていなかった。