技術革新によるイノベーションに対して企業経営はどのようにあるべきか
を考察した本。
副題に「技術革新が巨大企業を滅ぼすとき」とあるとおり、産業構造その
ものを変容させるような技術革新に実績ある企業が対応できずにおちぶれ
ていくのはなぜか、その理由を探っている。
要点だけつまんで言えば、「技術予測とマーケティング戦略にもとづく正
しい経営を行っているから」というのがその理由のようだ。
主にハードディスクドライブ業界を事例としてとりあげ、その技術革新の
激しさが企業淘汰を生んできたという通説を否定するとともに、破壊的な
技術革新と持続的な技術革新という2種類のイノベーションの差異と、産
業構造に内包されるバリューネットワークという構造がその謎を解く鍵で
あると論じている。
いずれもメインフレーム、ミニコン、パソコン、ノートパソコンといった
顧客・収益構造の変革を伴うイノベーションが起こったことにより、既存
顧客に束縛されていた既存企業が消えていったと、データに基づいて分析
している。
ある技術革新がその業界をどのように変え、古い技術との関係がどのよう
になるかを予測することは難しい。
それにどのように対処するかも含めて論じており、その論拠として膨大な
実データの分析を行っており、かなり説得的であり、かつ、刺激的な内容
だった。
まあ、言われてみれば単純な論理であるから、様々な業界に適用可能なも
ののようだ。読みながら脳裏に浮かんだのは、ユニクロのようなアパレル
ブランドで、その事業展開はまさに本書で述べられている、新規参入によ
るイノベーション企業の典型だろう。
おそらくは、Googleも。ただし、本書での展開はかなり製造業を意識した
展開であるため、Googleのような企業の破壊的イノベーションの成功に、
その論理を敷衍させるのはそのままでは難しいような感じも受けた…。