昭和を代表するクーデター事件、二・二六事件に関わった当時の青年将校
の家族に注目し、21名の決起者のうち、14名の未亡人たちのその後の人生
までを描いたノンフィクション。
遺書や手紙、当事者らの証言を通じて、個々の家族たちの絆や人生が垣間
見える。
この本のもっとも良い点は、著者自らの政治的な立ち位置や主張を排して、
徹底して家族や一人の女性の物語を描いている点。
戦前・戦中・戦後を通じて、逆賊/クーデター犯として刑死した者たちの
遺族にも、厳しい人生が待っていたことがよく分かる。とくに、新婚や、
子どもが産まれたばかりの者も多く、その後の人生はかなり過酷だったよ
うだ。
その点、青年将校たちの甘さ、流されてしまった弱さが際だつものとなっ
ている。
(結局、彼らがもっとも訴えたかったはずの軍上層部が彼らの行動を都合
のよいように軍部勢力の拡張に利用してしまったのも、かなり皮肉なもの
として描かれている…)