戦前の日本軍が行っていた諜報活動の実際と、史料をもとに追った本。
陸軍では、ソ連や中国を相手にインテリジェンス活動が質量ともそれなり
に進められていたが、海軍ではそもそもインテリジェンスがほとんど組織
化されず、結局敗戦に至るまでほとんど無視されていたといった話など。
海軍の話では、数年前にNHKが終戦記念日特集で流していたミッドウェー
海戦の特集が印象的だったのを思い出した。番組では、かろうじて帰還し
てきたパイロットたちが命懸けでやったのだからと、勝手に戦果を誇大報
告しはじめ、一般への「大本営発表」と同じく、海軍の参謀本部全体です
ら、正確な戦況をほとんどつかまないまま、細々と残った航空機部隊の大
半をつぎこんで自滅してしまう模様を描いていて印象的だった。
この本では、それをインテリジェンスの観点から、情報部が組織内で軽視
されていて、情報を挙げても他の部署からの主観的な意見が勝ってしまう
様子として描かれていた。
著者も指摘するとおり、結局のところ、現在にいたるまで日本にはまとも
な情報組織は存在しないわけだけど、それはやはり日本の組織文化による
ところも大きい気がする。いまだに小説や映画などの中で組織内での左遷
を表現するときは、「資料室行き」と表現されたりするのが典型なのだろ
けど。