オーストラリアのジャーナリストによる小和田雅子、皇太子妃の半生を追っ
たドキュメンタリー。
日本有数の外務高官を父に持つ、才気盛んで長い海外生活でハーバード大
卒、日本のトップキャリア外交官となる夢を持っていた女性がひょんなこ
とからお妃候補となり、傷つきながらも迷い史上最年長未婚の皇太子と結
婚し、宮中のストレスと不妊に苦しみ続け、娘の出産を得ながらも現在も
精神を病んでいる。…という日本では誰もが知っている物語を描いている。
宮内庁や外務省などによる抗議や、講談社からの出版予定だった翻訳本が
中止となって出版社を変更するなど、話題となっていたもの。
cf.
http://www.kunaicho.go.jp/kunaicho/hills-letter.html
なによりもまず著者が、宮内庁と皇室を取り巻く旧貴族界隈や保守層によ
る無責任な介入に強い批判を浴びせているのに気付く。たしかに、皇太子
夫妻に関して言えば、宮内庁自身が最も罪が重いのは認めざるをえないだ
ろう。しかし、官僚組織としての宮内庁がなぜここまで保守的なのかはよ
く分からないし、逆に言えば、官僚組織以外としての宮内庁内部の関係を
描かないと、この辺は整理できないのでは…という気はする。
この程度の話が日本人の手によって書かれなかったというのが一番の問題
ではないか。それはきっと宮内庁とメディアとの独特の共生関係が生んで
きた問題ではないかとおもうが…。
なにより最後まで読んでも絶望的で救いのない話にややうんざりしかける。
事態の好転を願うが、がんじがらめの制約の中では難しいかもしれない…。
あと、翻訳がちと直訳風味で読みづらい点はかなり痛い。