『ウェブ進化論』からはじまった著者の一連の著作シリーズの集大成的な
解説として読んだ。ウェブに代表されるIT化の進展から示唆される、現代
という時代の方向性と今後の社会のあり方を検討し、そのなかでの個人の
生き方を論じている。
これまでの著作では、ややもするとありきたりの話だと聞き流していた部
分が多かったが、「1975年〜2025年までの半世紀」をウェブ時代として、
大きな時代の変わり目に立っているものとして話を始め、時代性を中心に
据えたことで、今を生きるわれわれの手元に届く言葉となっているような
気がする。
なにより1976年生まれの私個人としては、本書で語られる時代とはまさに
自分が生きてきて、これから続いていく現在進行形の時代史なのだという
実感を迫ってくる感があり、自身の人生と時代感覚とを重ねながら素直に
感銘を受けることができた。それもあってか、福沢諭吉の言葉として紹介
している「一身にして二生を経るが如し」との言葉にも説得力を感じた。
一言でいえば、思いがけずエネルギーに満ちた本とでも言いたい。
ほかにも、「小さな奇跡」「新しい職業」といった独特の言葉や文体にも、
いろいろな思いのエネルギーがこもっているよう感じた。
5年後、10年後にもし続編が書かれるとしたら、どんな言葉でなにを語る
だろうか。そんなわくわくを感じさせるようなエネルギーを感じた。