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book - まさおのChangeLogメモ

2007-04-11 Wed

* ブログ炎上 [book]

本が好き!プロジェクトによる献本書評第二弾)

ブログが「炎上」する現象の紹介と、その対応策について述べた本。

著者はライブドアの役員としてブログを運営してきており、特にライブド
ア騒動を受けて主要幹部が逮捕され、各人のブログの大半が閉鎖を余儀無
くされていく中で、唯一ブログの更新を続けていった過程を契機として、
多くの中傷、荒らしといったコメントを受けながらも運営を続けていくこ
とそのものの意義やその対処法の違いにより、ブログが炎上してしまうの
か、鎮火するのか、その違いを見極めたいとの思いから、多くの具体的な
事例を取り上げ、解説を加えている。

本書には新たな概念の提示や目新しい提言が盛り込まれている訳では無い
が、ブログ普及以降数年の現状を良く整理した一冊として貴重な資料にな
るのではないかと思う。また多くの事例を紹介しながら解説を加えており、
さらに、実際に炎上に遭遇した政治家など複数の視点からの関係者へのイ
ンタビューを交えて、この分野に詳しくない人にも理解しやすいよう配慮
されているように感じた。
ただ、日頃から多くのブログを巡回し、様々な議論、論争等を読んでいる
身としては、やや物足りない印象を受けた。もう少し論じることはある気
はする。ま、出版媒体の制約という形ではしょうがないかなという気もす
るが。。。

現在は、ブログという概念が新たに登場して以降、様々な事例から「炎上
する」といった比較的新しい用語が生まれ、整理されていく過程にある。
ブログというメディアの概念自体は現在のWebの貧弱なアーキテクチャに
基づいた概念として普及したため、おそらく今後長期的に見れば、それほ
ど長生きしないだろうと思われる。しかし、「炎上」を産むのは人と社会
による要因が大きく、長期的に見てもそれほど変化することは無いのでは
ないかと思う。そういう意味では、ブログメディアに付随しているかに見
える「炎上」という概念/現象自体とは、存外長く付き合っていかざるを
えないであろう。

ひとつだけ違和感があった点としては、ライブドア社の強制捜査から堀江
氏逮捕に至るまでの堀江氏の「ほりえもんブログ」のケースを炎上として
捉えていた点だ。
cf. http://web.archive.org/web/20060412222119/http://blog.livedoor.jp/takapon_ceo/
私見では、このケースはマスメディアによる大規模な報道や、ブログ運営
者であった堀江氏自身の逮捕・身柄拘束に至った時点で、ブログ炎上といっ
た枠を越えたモノであったし、ブログのコメント欄閉鎖もなによりシステ
ム負荷などの点から加えられた措置であったと理解している。そういう意
味ではむしろ、Webメディア登場以前からあるような、事件・事故関係者
への中傷の手紙や脅迫電話といった現象や、マスメディアの取材攻勢を通
じたメディアスクラムといった現象との対比が必要ではないかと思う。そ
ういった現象同士の相関を通じて理解していくことで、ブログという媒体
の持つ特性が明らかになると同時に、理解も深まる方向であろうと思う。

2007-03-24 Sat

* オール1の落ちこぼれ、教師になる [book]

「献本に基づく書評・口コミ」という実験的マーケティングを行っている
本が好き!なるプロジェクトに参加登録し て申請してみたら献本してもら
えたので、そのサービスによる初書評を書いてみた。

いじめや家庭環境から、中学生時代にオール1の落ちこぼれで勉強する意
味も分からずに、就職した後にひょんなことからアインシュタインの物理
法則の世界を紹介するテレビ番組で物理から興味を覚えて、大学へ行くこ
とを決意し、名古屋大大学院を修了後に母校の高校で教鞭を取る教師の自
伝。

人それぞれ形は違うかもしれないが、それなりにいわゆる「勉強」に対す
る「諦め」のような感情はあるだろうが、著者の体験談は一面強烈であり、
それを率直な表現で語っているので、素直に読み通すことができた。

よく言われることだが、人は自身が理解したいことを理解したいようにす
るので、自身の想像の範囲外のものは理解しようとしないし、得てして理
解できないものである。これを打ち破るための自伝という形では興味深い。
例えば、私自身、中学時代はオール5が普通だったので、オール1の人のこ
とはよく分からなかった。なぜ・どうやれば、そんな点数が取れるのか、
不思議でしょうがない部分があった。。。一方、高校時代は一種の諦めの
ような感情が入っていたので、オール1まではいかなかったが、それなり
に著者のような立場で、諦めと「なぜ」といった感情がないまぜになり、
それらの感情の延長線上で理解できるかなあという面もあるが、全てを理
解できるわけではないだろうなぁと思う。
感情を伝え、相互理解を図ることの大事さという当たり前のことを教えら
れた気がする。

教育における信念として、著者は「褒めること」の大切さも一貫して伝え
ようとしている。褒めることにより、諦めない、諦めさせない感情を惹起
させようというのはおそらく正しい方向性だろうし、自尊心を糧に成長し
ていこうという意思を支えていくことが、教育のあり方の正道だろうと感
じた。

また、筆者はこの本を小中高生に読んで欲しいということから、小学5年
生以上の漢字にルビを付して平易な文体で書いているため、物足りないと
も感じるほどではあったが、読みやすく、流れも理解しやすい。

戦後教育というのは世代間格差が大きいのだけど、高度経済成長以降には
「勉強」そのものに対する意義付けは落ちてきている。それを取り戻すた
めにも、筆者のように「知的好奇心」「学問」に目覚めるという方向は正
道だろうし、それこそが高等教育が期待されていることに違いない。ただ、
その点を考えると、残念ながらこの本では大学入学が目標として語られる
のみで、入学後にどのような学問を修め、どのような知的興奮を覚えたか
という肝心の点に関する記述が薄く、「大学」篇があっても良いのではな
いかと感じた。
なお筆者は、大学を研究機関、教授を研究職として紹介しているが、これ
は誤りであり、高等教育機関といえども、本業は「教育職」であるはずで
ある。
これらも踏まえて、大学における教育のあり方など、筆者がどう感じたか
語ってみてほしいテーマはある気はする。

あ、そういう意味では「教育改革」だにうつつを抜かす前に、大学入試と
いう最後の壁を崩す必要があるのかもしれない。。。

2005-09-14 Wed

* ライブラリアンのためのやさしい統計学 [book]

図書館情報学研究における実例を用いた統計学の基礎。
NII図書館で借りてきて読んだ。

原書は1977年出版と非常に古い本であり、例題として取り上げられる実例
には「カード型目録の是非」など、かなりアレげなタイトルも散見される
が、蔵書規模と図書館サービス(貸出数・参考業務数など)との相関など、
図書館学研究において実際的な例題をもとにして、基本的な統計要約量の
読み方から、相関係数、検定といった統計の初歩について解説。

説明も丁寧で、翻訳調の部分も意外なほどなく、上記の例題に馴染がある
人なら分かりやすい解説だと思う。
(馴染のない人は当然、*普通の*入門書に当たるべきだろうが…)

問題は、統計学上の新しい知見についての追記が見当たらないこと。1970
年代から今日までの間に新たな統計手法や検定手法が発達していないとは
思えないのだが…。できれば、補足として述べておいてくれると大変良かっ
たのだが。

2005-07-03 Sun

* 大学の授業 [book]

川口市の図書館で今日借りてきて早速読んだ本。

千葉大学の教育学部で「道徳教育」を行ってきた筆者が自身の独特の授業
方法を元に、大学生の教育法の改善を提案。

大学生は、読み書きの方法がまるでできていないから、その基礎を集中的
に鍛え、個々の具体例に当たってきちんと自分の意見を言えるようになる
ための訓練が重要との信念に基づいた実践と提言。

抽象論に陥らないよう、ノートの取りかた、リポートの書き方の指導を中
心とした厳格な授業法は革新的に思えた。
いわゆる『お勉強』ではない『研究法』をきちんと教えるには、こうする
しか無いのかもしれない。

また、いわゆる大学生を対等な大人と見なすような現代的な観点からは、
相当にアクの強いものと受け取られるかもしれない。しかし、現実の大学
の惨状を見るにつけ、ここで展開される筆者の「大学の授業」観は、「怠
惰な」「たるんだ」大学生を立て直すための手法として有効なのかもしれ
ない。

少なくとも、一大学に数人はこういう厳格な授業を(少なくとも1・2年次
あたりで)する御仁がいてくれると、最低限のルールを学べていいだろう
なあ、と自分の経験からも思った。

大学で授業を行う一人として、非常に耳が痛い面も多いが、具体的な授業
法を示すという意味では、貴重な一冊。

2005-07-03 Sun

* 東大教授の通信簿―「授業評価」で見えてきた東京大学 [book]

先週、ジュンク堂で買ってきて読んだ本。

東大の教養学部での授業評価を行った際の経験について述べた本。

なんだか全体の文体が傲慢な「オレ様」口調なのが気になった。
もっと真面目に書けば、素直に読める部分もあるのに、不必要にアジって
いるのが読んでいて、不愉快。
Webで少し検索してみると、著者は東大内ではその物言いが評判の名物教
授として知られる存在らしい。しかし、そんな内輪受けに関係なく、素直
に筆を進めるべきだったのではと思う。

東大では1・2年次の授業は全学共通で、教養学部が担っているらしいが、
ここでの評価が進路となる専攻の決定時に大きく関係するとのことで、様々
な分野からなる巨大な教養学部の評価を統一するという難しさが出ていて
興味深い。

まあ、そういう点だけは参考になるが、金払ってまで読む本ではない。

2005-07-03 Sun

* 恐るべきお子さま大学生たち―崩壊するアメリカの大学 [book]

川口市の図書館で今日借りてきて早速読んだ本。

アメリカの大学生事情について、著者の身のまわりの話を中心にまとめた
もの。

感想としては、アメリカも同じなんすか…。変わらんねえという感じ。

というか日本よりも、
・ずっと権利意識が強い国民性
・いわゆるエリート大学と教育大学とに役割分担がはっきりしている
という理由から、さらにややこしい問題になっている気がする。
教育の評価とかなったときに、学生のご機嫌うかがいをいなきゃいけない
とか、厳しい話やねえ。

筆者は元ジャーナリストで西海岸の公立大学で教鞭についた人で、本書で
は、その本名・勤務先を匿名にして話を進めている。これが実際の大学名
などを出していればもっと説得力があったろうに。

2005-01-09 Sun

* オリエンテーリング [book]

川口図書館で借りてきて読んだ(だいぶ前だけど)。

日本でオリエンテーリング熱が(一時的に)盛り上がった1979年刊行。

著者は、日本のIOF参加に尽力した方で、IOF設立や日本のIOF参加など、
現在のオリエンテーリング界では聞くことのなくなってしまった状況が良
く描かれていて、とても興味深い。

「日本でも、1万人レベルのオリエンテーリング大会が開かれたことがあ
る」という事実すら、知らなかったことに衝撃を受けた。1960〜1970年代
のオリエンテーリング界の国内外での盛り上がりの様子が分かる記述は歴
史的にみても貴重だと思う。

また、オリエンテーリング競技についての記述も、競技の特性や、練習の
方法など、とても良く説明されていて、今見ても参考になる。
当然のことながら、IOF規則などは古いのでそこだけ読み替える必要があ
る。

2005-01-09 Sun

* 死者として残されて [book]

川口図書館で借りてきて読んだ(だいぶ前だけど)。

エレベストで遭難という極限の状況から奇跡の生還を果たしたアメリカ人
の物語。

もうすこし山岳での状況があるのかと思ったけど、エベレスト遭難までの
状況と帰ってきてからの状況について半々で書かれている。

鬱を抱えたアメリカ人医師がバカみたいに山にはまってしまった経緯や、
いつのまにか5大陸最高峰制覇を目指すようになったところなど、興味深
い。

2004-06-22 Tue

* 誰も知らなかった英国流ウォーキングの秘密 [book]

図書館(アルス)で借りてきた本を読了。

筑波大のスポーツ心理学の教授が書いた英国におけるウォーキング文化と
その実態、さらには、日本や米国、ドイツなどとの文化的な比較を行って
いる。

英国では、産業革命時にディスクロージャ(囲い込み)の進行とともに、
他人の私有地を通行できないという現象が起き、その反動としてレクリエー
ションとしてのウォーキングに対する要求が高まり、他人の私有地であっ
ても一定の通行権「Right to Way」を認めることになった。
この歴史的な特性が英国独特のウォーキング文化を形成し、英国全土に渡
る「フットパス」と呼ばれる巨大なウォーキング用の歩行道が構築されて
きたとのこと。これにより、英国人のウォーキングは、日本や米国で近年
流行している「フィットネスウォーキング」とは別個の娯楽文化として定
着しているという。
筆者は、実際に英国の3つのフットパスを歩き、その歩行記を載せている。
それぞれのフットパスにおける地理的特性や特徴、その地域の人々の活動
が生々しく表現されている。
文化的な比較検討では、特に日本における散歩文化を万葉集から始まり、
松尾芭蕉や福沢諭吉などの文学上の歩行における記述を取りあげて、ウォー
キングの類型を10に分けて論じている。

英国の実態を記した旅行記ものと文化比較的な考察とを合体させた本の構
成には、いささか無理を感じるものの、英国にこのようなウォーキングの
娯楽文化があったとは知らなかったので、とても興味深く読んだ。

ただし、日本におけるウォーキング文化の考察の中では、伊能忠敬のよう
な異才をほとんど取り上げていないし、修験道のような、修行の一環とし
てのウォーキングが与えた「散歩道」への影響や、レクリエーションの確
立に対する抵抗、近年流行の中高年のトレッキングブームなど、いくつか
考察をお願いしたい面はあり、まだまだ検討すべき部分は多いように感じ
た。

なにはともあれ、異文化の比較検討や、実地における文化を伝えるという
面での価値は高い良書であったと思う。
思いがけない発見。

2004-05-01 Sat

* ただマイヨ・ジョーヌのためでなく [book]

図書館で借りてきて読んだ。

才能あふれるスーパースターの自伝なので、ただでさえ感動的なのだが、
癌からの復活、ツールドフランス優勝といったエピソードがあると。。。
翻訳も素晴らしい。

ただ、2人の離婚していった父親への態度や自らの育った田舎町へのあか
らさまな憎悪の記述などは、アメリカ人らしい態度というべきか、本人の
コンプレックスのなせる業か、評価に苦しむ。どちらにしても自らへの自
信に満ちた記述は、いかにもアメリカのスーパースターといった雰囲気。

公式サイトを眺めたら、2つ目の自伝も出した模様:

ちなみに、奥さんとの結婚、出産で終わっているが、この奥さんとは5年
で離婚したらしい。
この本を読むかぎりでは、分からんでもない、とか思った…。

2002-10-06 Sun

* 「Webの創成」 [book]


前半、後半ともに Tim-Berners-Leeの信条が率直に語られていて、非常に
面白かった。特に、前半のWebの発展にいたる道筋は一つのドラマとして
も非常に興味深い。どっかで映画化しないかなぁ。

あと、Mosaicグループとの確執(というほどでもないが…)とかも知らん
かったので、興味深かった。