「献本に基づく書評・口コミ」という実験的マーケティングを行っている
本が好き!なるプロジェクトに参加登録し て申請してみたら献本してもら
えたので、そのサービスによる初書評を書いてみた。
いじめや家庭環境から、中学生時代にオール1の落ちこぼれで勉強する意
味も分からずに、就職した後にひょんなことからアインシュタインの物理
法則の世界を紹介するテレビ番組で物理から興味を覚えて、大学へ行くこ
とを決意し、名古屋大大学院を修了後に母校の高校で教鞭を取る教師の自
伝。
人それぞれ形は違うかもしれないが、それなりにいわゆる「勉強」に対す
る「諦め」のような感情はあるだろうが、著者の体験談は一面強烈であり、
それを率直な表現で語っているので、素直に読み通すことができた。
よく言われることだが、人は自身が理解したいことを理解したいようにす
るので、自身の想像の範囲外のものは理解しようとしないし、得てして理
解できないものである。これを打ち破るための自伝という形では興味深い。
例えば、私自身、中学時代はオール5が普通だったので、オール1の人のこ
とはよく分からなかった。なぜ・どうやれば、そんな点数が取れるのか、
不思議でしょうがない部分があった。。。一方、高校時代は一種の諦めの
ような感情が入っていたので、オール1まではいかなかったが、それなり
に著者のような立場で、諦めと「なぜ」といった感情がないまぜになり、
それらの感情の延長線上で理解できるかなあという面もあるが、全てを理
解できるわけではないだろうなぁと思う。
感情を伝え、相互理解を図ることの大事さという当たり前のことを教えら
れた気がする。
教育における信念として、著者は「褒めること」の大切さも一貫して伝え
ようとしている。褒めることにより、諦めない、諦めさせない感情を惹起
させようというのはおそらく正しい方向性だろうし、自尊心を糧に成長し
ていこうという意思を支えていくことが、教育のあり方の正道だろうと感
じた。
また、筆者はこの本を小中高生に読んで欲しいということから、小学5年
生以上の漢字にルビを付して平易な文体で書いているため、物足りないと
も感じるほどではあったが、読みやすく、流れも理解しやすい。
戦後教育というのは世代間格差が大きいのだけど、高度経済成長以降には
「勉強」そのものに対する意義付けは落ちてきている。それを取り戻すた
めにも、筆者のように「知的好奇心」「学問」に目覚めるという方向は正
道だろうし、それこそが高等教育が期待されていることに違いない。ただ、
その点を考えると、残念ながらこの本では大学入学が目標として語られる
のみで、入学後にどのような学問を修め、どのような知的興奮を覚えたか
という肝心の点に関する記述が薄く、「大学」篇があっても良いのではな
いかと感じた。
なお筆者は、大学を研究機関、教授を研究職として紹介しているが、これ
は誤りであり、高等教育機関といえども、本業は「教育職」であるはずで
ある。
これらも踏まえて、大学における教育のあり方など、筆者がどう感じたか
語ってみてほしいテーマはある気はする。
あ、そういう意味では「教育改革」だにうつつを抜かす前に、大学入試と
いう最後の壁を崩す必要があるのかもしれない。。。