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book - まさおのChangeLogメモ

2008-05-02 Fri

* イノベーションのジレンマ [book]

技術革新によるイノベーションに対して企業経営はどのようにあるべきか
を考察した本。

副題に「技術革新が巨大企業を滅ぼすとき」とあるとおり、産業構造その
ものを変容させるような技術革新に実績ある企業が対応できずにおちぶれ
ていくのはなぜか、その理由を探っている。

要点だけつまんで言えば、「技術予測とマーケティング戦略にもとづく正
しい経営を行っているから」というのがその理由のようだ。

主にハードディスクドライブ業界を事例としてとりあげ、その技術革新の
激しさが企業淘汰を生んできたという通説を否定するとともに、破壊的な
技術革新と持続的な技術革新という2種類のイノベーションの差異と、産
業構造に内包されるバリューネットワークという構造がその謎を解く鍵で
あると論じている。
いずれもメインフレーム、ミニコン、パソコン、ノートパソコンといった
顧客・収益構造の変革を伴うイノベーションが起こったことにより、既存
顧客に束縛されていた既存企業が消えていったと、データに基づいて分析
している。

ある技術革新がその業界をどのように変え、古い技術との関係がどのよう
になるかを予測することは難しい。
それにどのように対処するかも含めて論じており、その論拠として膨大な
実データの分析を行っており、かなり説得的であり、かつ、刺激的な内容
だった。

まあ、言われてみれば単純な論理であるから、様々な業界に適用可能なも
ののようだ。読みながら脳裏に浮かんだのは、ユニクロのようなアパレル
ブランドで、その事業展開はまさに本書で述べられている、新規参入によ
るイノベーション企業の典型だろう。
おそらくは、Googleも。ただし、本書での展開はかなり製造業を意識した
展開であるため、Googleのような企業の破壊的イノベーションの成功に、
その論理を敷衍させるのはそのままでは難しいような感じも受けた…。
Referrer (Inside): [2009-01-03-1] [2008-06-20-3]

2008-04-29 Tue

* 戦争の経済学 [book]

戦争を経済学的観点から見ると、どうとらえられうるかという点を解説し
た入門書。

戦争が景気や経済動向に与えるマクロな視点に加えて、物品調達や人員確
保といったミクロな視点から見た考察がバランス良く加えられていて、大
変興味深い。

たとえば、各章末尾に練習課題が置かれているなど、全体を通じて、戦争
という題材を経済学の学部レベルの演習で取り上げて、経済学の基礎的な
概念の学習に使えるように工夫されている。
逆に言えば、展開されている議論はそれほど緻密ではない印象も受けるが、
戦争というものが経済的にペイするのかという視点から徹底して考えてみ
るキッカケとしては面白く、その題材の料理の仕方も基本的なポイントを
おさえたものとなっている。

難点を言えば、核兵器やテロリズムといった事象を取り上げた章では、そ
の考察がかなりアメリカの政策的観点からの見方に偏って取り上げられて
いるので、別の観点からも見る必要があるように思える。

いずれにしても、戦争と経済という関係の概観をつかむには、最適の本と
いう気がする。

個人的には、もはや戦争は経済的にペイしないのだなあという感想を持っ
たけれど。。。

2008-04-22 Tue

* 公共図書館の論点整理 [book]

公共図書館に関する議論における論点に着目して、その内容をまとめた本。
いわゆるレビューのようなもの。

公共図書館にかかわる「論点」とされる内容として、以下の話題をとりあ
げ、それぞれについてのこれまでの議論の経過とその主要な論点をまとめ
ている。

1章・「無料貸本屋」論
2章・ビジネス支援サービス
3章・図書館サービスへの課金
4章・司書職精度の限界
5章・公共図書館の委託
6章・閉架資料の紛失とBDS
7章・自動貸出機論争

「はしがき」で田村先生が述べているとおり、執筆者がそれぞれにことな
ることから、それぞれのレビューのスタイルは多様で、立ち位置にも別に
統一があるわけではない点は、やや読み辛い気もする。たとえば、4章と5
章に近接する議論の展開が見られるのを除けば、全体に別個のレビューが
おこなわれているように思う。このため、レビューの立ち位置として中立
的に論じるのか、著者としての立場をある程度示した上で議論をまとめる
のか、といった点で、雑多な印象を受ける。この辺はやや好みのわかれる
ところかもしれない。

とはいえ、個々の論点に関して言えば、これまでの議論をまとめて再構成
するという本来の目的には成功しており、かなり有益な論点整理が行われ
ているように思える(素人目には…)。

ついでに、内容とは関係ないのだけど、こういうかなりメイニアックな話
題を取り上げているものを書籍として成立させたのは稀有な気も。。。

2008-04-15 Tue

* 人名の世界地図 [book]

世界各国の人々の主な人名とその由来を言語圏別に羅列し、解説したもの。

本業のほうで人名との格闘の日々なので、そのためもあって少し気になっ
たので読んでみた。

昔ながらの名付け法は宗教色の濃いもので、どの国や文化でも、その風俗
を伝えるものであることがなんとなく分かる。また、人名については驚く
ほど流行りすたりを繰り返していることが分かる。
また、多くの名前の由来を観ていると、聖書由来の由緒ある名前であって
も、その名前からイメージされる人物像というものが、半世紀単位くらい
で覆され、流行りすたりの繰り返しであったことにも気付かされる。

タイトルに「世界」とあるとおり、記載されている人名の大半は西欧由来
のものが大半を占め、一部アフリカやアジア諸国などのもので、日本人の
人名との関連はアイヌなどでの例を除けばあまり示されていない。

ちょっと気になったのは、示される人名などのデータに裏付けが無い点で、
その点についても詳細が書かれていれば良かったのになあというところ。
Referrer (Inside): [2008-05-19-1] [2008-05-09-3]

2008-04-13 Sun

* ジェネラル・ルージュの凱旋 [book]

今年にはいってから読んでいた、大学病院を舞台にしたミステリ小説。
『チーム・バチスタの栄光』[2008-01-24-1]
『ナイチンゲールの沈黙』 [2008-02-08-1]
に続く第3弾作品。

冒頭から前作とのオーバーラップがあるので、一瞬、間違えて第2弾の
『ナイチンゲールの沈黙』を読み返してしまっているのかと、錯覚を起こ
して表紙をひっくりかえしてしまった。エンディングまでそのままオーバー
ラップは続いたので、交差する時間感覚を楽しんでもらおうという趣向の
ようだ。
無理にオーバーラップさせる必然性を感じなかったので、これはどうもい
まいちな印象。

全体のストーリー展開などは前作からの流れをひきついでいるので、相変
わらずなのだけど、主要登場人物の沼田の言葉のいくつかがひっかかって
しまっている。

まあ、エンターテイメントとしては相変わらずのキャラクターなどの掛け
合いもうまくて面白くて良いのだけど、その反動からか、第1弾から見ら
れたシリアスな日本の医療問題との絡みとしては、どうも弱くなっている
気がする。あとリアリティの点でも…。
第1作の頃で見られたこのあたりのバランスを、今のペースで書いている
小説に反映させるのは難しいのだろうけど。。。

2008-04-12 Sat

* 母べえ [book]

先日[2008-02-05]に観た映画『母べえ』の原作。

舞台となっていた場所の地名が出てくるかと思って読んだが、その点は書
かれておらず、やや期待外れだった。。。

80年代に、女性ヒューマン・ドキュメンタリー大賞という女性作家向けの
賞レースのために書いたもののようで、小さなエピソードをつないで書か
れている。エピソードそれぞれはまさに映画での描写そのままのストーリー
になっている。このために、映画を観たあとでは、あまり読む必要のない
ものであるように感じた。。。

まあ、そういう意味でも映画の方が山田洋次らしい作品で、原作の良い部
分をそのままうまくつないで作ってあるものだったのだなとあらためて感
じたが…。あと、吉永小百合も短かい文章のようなものを寄せているが、
その中に出演を引き受けるときに、自分が若い母親を演じてもよいものか
躊躇した、というような記述があり、やはりそれなりに考えたのだなとい
う点も確認できた。

2008-04-01 Tue

* 書物の日米関係 [book]

昨年秋に日本図書館情報学会の2007年度学会賞を受賞した作品。

主に米国内の大学図書館における日本語資料(および日本関連資料)の蔵
書形成を丹念に追ったものだが、日本語資料がどこから来て、誰が収集し、
どのような場所にいる読者のもとに届けられたか、どのような研究が行わ
れたか、それがどのような文脈で受けとめられたかをいくつかの観点から
戦前、戦中、戦後と時代背景とともに逐一に解説し、そこでの図書館およ
び図書と読者を結んだ図書館員をはじめとする仲介者の役割を如実に伝え
ている。

著者が序章から絶えず強調し、また副題『リテラシー史に向けて』とある
とおり、単なる資料の歴史の羅列にとどまらず、資料群がどのような媒介
者や読者を経て、日本語や日本文化の接点(リテラシー)となったかにつ
いて、一次史料への参照つきで、かなり自覚的に読むことを要求される。

感想を一言で言えば、素晴しい仕事である、との一言に尽きる。

もちろん、日本語資料の歴史上の立ち位置と背景解説、詳細な事実叙述は
一次史料の丹念な調査から掘り起こしていて、それだけでも優れているの
だけど、それよりも驚いたのは、本書における著者の論点が徹頭徹尾、図
書館サービスにおけるリファレンス活動や組織化活動といったサービスの
本質への記述を通じて、日本語資料の問題を考えている点にあったこと。

序章(24ページ)に見られる以下のような問い:

日本についての図書館を新たにつくる場合、買うべきいちばん大事な図
書は何だろうか。... 参考図書(レファレンスブック)である。

は、まさに本書がこの点を主眼に置いていることが明白となる主張で、こ
の観点から著者は「ただ図書館の蔵書史を羅列するという形式はさけ」た
構成で、日米間の歴史的な流れとそこに登場してくる人物を地道に追いか
け、記述している。

さらに、多くの日米の当時の一線の図書館員たちによる活躍の様子が分か
るし、それがどのように読者まで結び付いていったかもふくめた描写は感
動的ですらあったと思う。

また、これは著者が意図したことではなく副産物なのだろうが、日米の戦
争をはさんだ交流の流れは、多くのドラマも生んでいるが、それらについ
ても、個々人の名を挙げながら、詳細に追いかけ、半ば感動的なストーリー
となっていて、読み物としても読み応えがある。

本書はたまたま日米における蔵書形成期を含む激動の時代を追った本だが、
単なる歴史研究にとどまらず、「図書館における読者への資料提供」とい
う普遍的なテーマに取り組んだものとして読むべきだろうし、そういう観
点からも必読の書となるもののように思った。

さらにこの点は咀嚼、検討して、「現代の日本」という、筆者が述べたの
とは異なる環境の中でどのような形で結実するか、という実践に近い問題
として捉えなおす必要があるのかもしれないな、と思った。

昨年秋の研究会[2007-10-14]では半ば聞き流してしまっていて、手にとる
までに時間がかかってしまったのが残念だったが、学会賞受賞についても
そのような趣旨で受賞されたものと確信する。
Referrer (Inside): [2009-01-03-1]

2008-03-30 Sun

* NEXT [book]

マイクル・クライトンの新作で、遺伝子組み換えなどのバイオテクノロジー
を主題としたSFサスペンス。

プロットもSFらしいSFという感じで、クライトンらしいスリリングな展開
も心地良く、一息に読んでしまった。

賞金稼ぎってすごいな、という一言。。。

2008-03-17 Mon

* 理系のための口頭発表術 [book]

いわゆる学会での口頭発表やセミナー発表等の準備や心構えから質疑応答
への取組みまで、ひととおりのポイントを押さえた、発表手法の解説。

服装についての注意からはじめるところからして、きわめて実用的な本
のように思う。

もともと米国での教科書のようだが、翻訳もスムーズで、かなり分かりや
すく読める。さらに、留学生対応からか非英語母語者に対するアドバイス
もあって、とても親切。

作文法に対しては、『理系のための作文技術』をはじめとして、おおくの
書籍が出版されているが、発表技術に対しては意外と少なく、特に研究に
おける学会・セミナー口頭発表のための注意はかなり口頭伝承に近いもの
となってしまっているように思う。
系統立った訓練を受ける機会もほとんど無いので、口頭発表に関しては研
究室によってそのできばえが左右されたり、注意点などが偏った形で伝わっ
ていたりするので、一度ひととおりのことを確認するのに便利だと思う。

2008-03-13 Thu

* Googleとの闘い [book]

フランス国立図書館の館長を務める著者による、Google Printプロジェク
トに対する返答という形で出された小冊子をまとめたもの。

著者の主な論点は以下の2つのようだ。

- 「商用/クローズドなMass digitizationをどう見るか?」
- 「Mass digitizationの優先順位をどう付けるか?」

著者はこれらの点に対し、オープンかつ反グローバル・自文化尊重という
観点から、積極的に欧州的価値観からの取組みをおこなうべきとの立場に
立っている。具体的には、グーグルなどが進める取組みに遅れを取ること
に危機感を表明し、自国の国立図書館もしくは欧州国立図書館連合での、
積極的な電子化政策と財政基盤の確立を訴えている。

まあ、米国の長年の同盟国としてのフランス、という立ち位置の複雑さも
あるのかなと思う。
(イラク開戦期の微妙な時期だったのもあるのだろけど…)

文化的側面からの言及も多くなされているため、その情緒的な書きぶりに
はやや懸念を持つ。まあ、国内向けの論説としてはこれでいいのかもしれ
ないが、長期的もにそれでやっていけるのか、はたまた。。。

新しい技術と文化の問題での議論という意味では、90年代に盛り上がった
「Unicode有害論」を思い出してしまった。。。

2008-03-12 Wed

* キーワード検索がわかる [book]

キーワード検索の背後にある概念と原理を解説した入門書。

この間[2008-01-17]に、『3時間で「専門家」になる私の方法』を読んだ
時の感想:

あと、逆に言えば「情報検索演習」や「レファレンス演習」の教科書も、
こういった煽り系のタイトルに変えてマーケティングするだけで、売れる
んじゃないかなあと思わないでもない。。。

という発想をそのまま実践された本のように思う。
つまり、司書資格課程の情報検索演習の教科書をそのまま一般向けにした
ものととらえるのが良いだろう。

検索要求の例とそれをキーワードに展開していく例も分かりやすいし、各
節ごとにちょっとした練習問題が付いていて、すこし考えさせる内容なの
も、さっと読み流してしまわないための良い構成のように思う。

キーワード検索から見たファセット分析の解説と例も分かりやすく、あら
ためて勉強になった。総じて、概念レベルでの整理と具体例のバランスに
優れていて、大量情報からの検索を行う際の基本的な考え方を理解するの
に必須のことがらをうまくまとめていて、良書だと思う。

一点だけ弱いと思う点は、WebもしくはWeb上のサーチエンジンに特化した
話だ。

これはおそらく、たぶん、このあたりの利用者から見たキーワード検索と
いう概念と、Webでサービスされているサーチエンジンの特性との差異の
部分であろうから、概念・原理を考えさせるという本書の意図からすれば、
蛇足の部分だろうし、類書において追求すべきことがらだと思う。

ただ蛇足ついでに言えば、残念なのはこのような点を実践できるような解
説は日本語では今のところ見当たらないという点だ。いまや、Webサーチ
エンジンの原理・実装として、単純な全文検索方式による実装を想定する
だけでは、弱いと思うし、逆に有害な局面も出ているように思う。
サーチエンジンをあまりにもブラックボックス化して考えるのは、利用者
側にも、サービス提供側にも、双方にとって不幸なことだと思う。
もう少しこのあたりにつっこんだ解説が出てくることが望まれそう。

自分で書けば良いのかな...!?

2008-03-12 Wed

* 決断力 [book]

数年前に出版されてベストセラーになった羽生善治による新書。

全体に、ビジネスなどの他の分野、現場に応用するためのヒントとして、
自身の体験や勝負に対する心構えを説くというスタンスで平易な文章で、
様々な観点から語っている。

羽生さんの本は、読んだことがなかったのだけど、まえがきにある当時の
米長名人から名人位を奪ったときの話は、天才と呼ばれた人間の勝負に対
する格闘の模様を如実に描く逸話で印象的。

本文のなかでは、継続こそが棋士たる所以であるとの言も興味深かった。

2008-03-06 Thu

* 戦前の少年犯罪 [book]

戦前期の少年犯罪記事を紹介しながら、「昔は良かった…」「今時の若者
は…」といった近年の論説を皮肉る内容で、本書のために設定したとされ
るペンネームの名前もふざけてはいるが、皮肉が効いている。

既にWebサイトにまとめていた内容をベースにしたもので、事件記事など
本書の大半は以下で見ることができる:
http://kangaeru.s59.xrea.com/

謝辞にて岡山県立図書館と市川市立中央図書館のレファレンス係を挙げて
いるというのも興味深い。。。

2008-03-05 Wed

* 渋滞学 [book]

渋滞現象をキーとして、数理的なセルオートマトン法やグラフ理論、社会
応用的な交通流通の話題、社会心理学、アリの行動といった生物学や、物
理学との接点まで幅広い、まさに「融合領域」研究の解説書。

説明も平易で具体例とともに提示していて、分かりやすい入門書といった
という位置付けに成功していると思う。

幅広いテーマなので、参考文献をたどって読んでいく楽しみもありそう。

あと、たまたまだろうけど、本書中で紹介されていた、自然渋滞の現象に
ついての実験に関して、原著論文として採択されたという記事も見かけた。
http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/weblog/index.php?UID=1204620156
http://iopscience.iop.org/1367-2630/10/3/033001 (doi:10.1088/1367-2630/10/3/033001)
http://technology.newscientist.com/article/dn13402
http://jp.youtube.com/watch?v=Suugn-p5C1M

2008-03-02 Sun

* 緋色の皇女アンナ [book]

ちょうど十字軍が起こった時代、中世のビザンチン帝国を舞台にした皇帝
の長女を主人公にして、母・祖母・弟との確執を描いた小説もの。

ちょっと体調を崩して寝込んでいたので、気楽に読めるものと思って手に
取ったけど、どちらかと言えば、小学校高学年から中学生くらい対象の、
子ども向けといった編集のものだった…。

弟と帝位を争って修道院に送られ、そこで父皇帝の伝記を書いたという、
歴史上に残る数少ない女性歴史家という実際の史実を元にしたものらしい。
その部分や、題材としてとりあげられることも少ない時代・地域なので、
とても興味深いのだけど、子ども向けなのがなんとも。。。

2008-03-02 Sun

* マリー・アントワネット [book]

先日[2008-02-16]観た映画『マリー・アントワネット』の原作。

上下巻2冊のうち、映画では上巻の部分しか映像化していなかったみたい。
前半の美麗さ、優雅さから一転して、かなり過酷な監禁の様子が描かれて
いたりで、さもありなん…だけど。

中世の歴史モノを得意とする作家の手によるリバイバルもので、マリー・
アントワネットの再評価という点から話題になったらしく、詳細な宮中で
の暮らしや、当時の受け止め方についての解説があって、とても参考になっ
た。

2008-03-01 Sat

* 本を読む本 [book]

なんとも幻想的なタイトルだが、原題『How to read a book』というタイ
トルのまま、読書法・読書技術の指南の古典。

分析的読書の方式として、キーワード分類の重要性だとか、単語の意味の
重要性だとかの、プリミティブなところまで細かく指摘して、細分化した
読書指南になっているのは、興味深くもあり、さすがといった趣きか…。

2008-02-20 Wed

* 反転 [book]

元特捜部検事から弁護士に転身して、バブル期の表・裏社会のドンたちの
顧問弁護士として過ごした著者の自伝。

前半は、生い立ちから検事になるまでと、検事となってからの出来事。
中盤は、検事をやめるにいたる経緯から、バブル期の特徴的な人物たちと
の交際の模様が描かれ、最後に自身が関わったとして有罪となった事件の
内幕まで。

昨年、「国策捜査」という流行語を生んだ佐藤優の『国家の罠』[2007-12-11-1]
とともに話題となった本らしい。

なかなか盛り沢山な内容だが、自伝としてはそれなりに読み応えがある。
生い立ちの貧乏話から苦学するあたりの話や、バブル期の豪壮なお金の話
は、その時代を代表する話題で、かつ、著者自身の思いがなかなかこもっ
ていて、興味深い。検索の内側にある論理が透けてみえてくるような検察
官僚についての話題や、暴力団をはじめとする裏社会との付き合いについ
ても、なかなか興味深い。

また、具体的な実名をあげながら書いてあるという点で、上記の佐藤優の
本と同じく印象的。

ただ、最後の自身の事件についての記述は細かな話が続くので、そこだけ
流れがとぎれているように感じた。

2008-02-19 Tue

* ブラック・ダリア [book]

先日[2008-02-09-2]観た映画の原作。

映画の序盤のあたりなどは驚くほど細かなところまで原作に忠実に作って
あったことが分かったし、終盤3分の1ほどはだいぶ簡略したストーリーに
なっていたことも分かった。

映像にまぎれて見逃していたとおもわれる伏線など、いくつか新たな発見
もあった。

2008-02-15 Fri

* 自分の体で実験したい [book]

副題に『命がけの科学者列伝』とあるとおり、自らを被験者としたサイエ
ンティストたちの物語。
分野も医学から工学まで、結末もハッピーエンドからバッドエンドまで、
研究上の飛躍を得られたものに得られなかったものも、様々ある。

はじめ、本屋さんの店頭で陳列してあるのを見かけて、時間つぶしにぱら
ぱらめくってみたときに、冒頭の高温での人体実験から、けっこう面白そ
うだったので読むことにしたが、どの話も面白かった。

ちなみに、一番読むのがつらかったのは「心臓カテーテル」の話で、その
ほかは意外と大丈夫だった。