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book - まさおのChangeLogメモ

2008-06-17 Tue

* 私の家は山の向こう [book]

有田芳生による歌手テレサ・テンの伝記。

ビザ入国問題や天安門事件など、台湾という政治的事情に翻弄された女性
歌手というスタンスで描いているのが印象的だった。
特に天安門に際しての香港での活動など、詳細な説明が興味深い。

個人的には、世代的にテレサ・テンをそれほど知らないので、そもそもの
基本的な情報からして興味深く読んだ。
ノンフィクションとしては彼女の心情や社会状況をよく書けていると思う。

2008-06-16 Mon

* ケータイ世界の子どもたち [book]

ケータイによるコミュニケーションやフィルタリングの現状をおおまかに
解説し、論点整理している。

とくにサイトごとのサービスの特徴やフィルタリングとの関係、運営体制
の違いについて解説しているのがよかった。ただ、そのケータイサイトで
どのようなコミュニケーションを子どもたちがおこなっているのかについ
ては、表面的な解説にとどまっていて、個別のコミュニケーションの事例
報告的なものはないので、ポケベル以前世代の当方としては、いまひとつ
実感がわかなかった。。。

2008-06-15 Sun

* 天と地の守り人 [book]

「守り人シリーズ」最終作。3部構成で皇太子チャグムと用心棒バルサの
活躍をバランスよく描いている。

最終巻あたりは戦争のちなまぐさい話がつづく。
新ヨゴ国の描写には、戦前戦中の日本を想起させるいかにもな表現が続く。
よみはじめのころの文庫解説あたりに書いてあったことにようやく合点が
いった。

全体に、これまでのシリーズでの各国の物語とうまく整合させて描いてい
て、スッキリと終わった印象を持った。

最後のあたりは大人向けに書いたら、「妖星伝」のような雰囲気になるの
かな、、、と思った。

2008-06-12 Thu

* 蒼路の旅人 [book]

「守り人シリーズ」第6弾。

皇太子チャグムがあちこちへと流されていく、最終作に向けての展開、、、
といったストーリー。

南の大陸の大国の話題がはじめてくわしく語られるものの、いきなり話が
大きくなりすぎるきらいがある。(旧)ヨゴ国あたりの話がもう少しある
とついていきやすいのかなあといった印象だったのだけど。。。

結末もふくめて、次の最終作に話をつないだ感じ。

2008-06-09 Mon

* 神の守り人 [book]

来訪編と帰還編の上下巻構成からなる、「守り人シリーズ」第5弾。

南北に分かれ、複数の種族ならなるロタ王国の物語。

上下巻に分かれてこれまでより話が長い分、ややオチが見えている箇所も
多いけど、少女と民族性の違いをテーマとした話の展開はあいかわらずで、
楽しく読めた。

2008-06-09 Mon

* 虚空の旅人 [book]

昨年末[2007-12-26][2007-12-29]に読んでいた「守り人シリーズ」の第4弾。

今度は海の王国サンガルを舞台にした物語。

2008-06-04 Wed

* 職場改善 [book]

人間工学を職場という領域に適用するための考え方の解説。後半のほとん
どは改善事例の紹介が占めている。

とくに後半の長大な事例紹介が興味深い。かなり雑多なのが難点だけど、
なにより量がすごいので、これを眺めているだけでも面白い。様々な環境
での改善事例なので、いろいろとヒントになることがありそう。あと、物
理作業量や負荷量を規定するための定量的な指標については不勉強で知ら
なかったので、参考になった。

たとえば情報行動の研究でも「Work place」と「Daily life」という文脈
の違いを意識した研究は多いのだけど、ここまで徹底して職場という環境
そのものを意識して、物理的制約にもとづく工学的なアプローチ(もしく
は産業保健などの観点)による様々な取組みがされているのだなあという
ことに感銘を受けた。

ところで図書館という職場も肉体労働の現場として言及されることが多い
のだけど、本書で見られるような観点からの研究はあまり聞いたことがな
いなあ。。。

2008-05-31 Sat

* Sweet Sixteen Princess [book]

ここ3年くらいかけて読んでいる『プリンセス・ダイアリー』シリーズ。

前回読んだのはシリーズ7作目[2008-01-11]で、今回のはその7作目と8作目
の合間に位置する7.5作目(のはず)。

今回はMiaの16歳の誕生日がテーマで、相変わらずのどたばたという展開。

米国では16歳が運転免許を得られる年齢ということで、思春期からの区切
りの年齢という意味合いが大きいらしい。。。
作中でも、法的にセックスが許される年齢になるという表現が出てきた…。

あとは、作品中でも、Miaが著名な存在になったという設定にしてしまっ
ているので、かなり先々への展開が苦しくなってきている気もする。

あと、最後のあたりで、王室付き合いの中でプリンセス愛子がお気に入り
として唐突に挙げられているのは、よく分からないが。。。

2008-05-29 Thu

* 半落ち [book]

アルツハイマー症の妻を警部が絞殺した事件という設定で、殺害後の「空
白の2日間」の謎を追うミステリー。

先日[2008-05-07-1]読んだ『クライマーズ・ハイ』と同じ著者つながりと
いうことで読んでみた。

オチはかなり強引だが、取調べを行う警視や検察、新聞記者、裁判官と、
それぞれの物語とからめて、うまく進めている。

2008-05-28 Wed

* Olive's Ocean [book]

12歳の少女が、生や死、人生について考える一夏の経験を描いた物語。

平凡なようでいて、狭い世界でもがく思春期特有の雰囲気が良く出ている。

ただ、個人的には苦手な文体で、読み辛かった。。。

2008-05-22 Thu

* マッハの恐怖 [book]

1960年代に連続して発生した航空機事故を題材としたノンフィクション。

当時、NHK記者であった筆者が垣間見た事故現場や遺族などの事故関係者
の様子だけでなく、事故に迫る調査委員会や、その葛藤を描いている。

筆者の関心は、事故そのものもさることながら、急速に進展する技術革新
に対する社会や人間の哲学といった側面をとらえようとする姿勢にあり、
とても興味深く感じた。

先日[2008-05-07-1]読んだ『クライマーズ・ハイ』からの航空機事故つな
がりという感じで続けて読んでみたが、やはりノンフィクションの迫力は
癖になる気がする。。。

2008-05-20 Tue

* 1421 [book]

1421年の中国・明の鄭和による海洋大遠征は、全世界へとその船を進め、
地図を作り、作物・家畜を交換し、入植地を築いたという説を唱える本。

副題に『中国が新大陸を発見した年』とあるとおり、これはコロンブスら
の大航海時代の探検家に先立つこと半世紀近くあり、西欧の冒険家たちは、
明船団による成果を元に探検を進め、「新大陸の発見」も既に鄭和船団の
一部により遂げられていたと述べている。

さらに、新大陸のみならず、南極・北極域にまで遠征は及び、詳細な地図
製作術により、たとえば有名なピリー・レイス地図などにその痕跡を残し
ているとの斬新なアイデアも披露している。

著者は元イギリス海軍の潜水艦乗りで海の航法といった面から考察を進め
るという独特の発想は興味深い。

その一方で、史料の扱いに関してはかなり粗雑な印象…。エビデンス抜き
にかなりの独断で論を進めている箇所も目につく。
そういう意味では、素人なりの斬新な解釈により、大胆に物語として織り
あげたという点が、この本のもっとも興味深いところじゃないかと思う。

なにより、当時の壮大な風景を描くことには成功しているように思う。
おもわず書店の店頭で手に取ってしまったのも、その大胆な論調だったか
らで…。

また、コロンブスらに代表される西欧による「発見」という定説となって
いるものに先立つ、中華帝国による「発見」を対比させているため、中国
による当時の技術力などを西欧のそれと比べて、スケールあるものとして
描く反面、西欧・中国以外における航海術やその可能性について記載が薄
いのは若干残念で、あくまでも、筆者の関心の中心は、コロンブスらの大
航海時代との対比にある点に留意が必要そうな雰囲気。。。
特に、アラビアやオセアニア地域における交流の様子にも考慮が必要なん
じゃないかなあという気はする。

2008-05-19 Mon

* 名前と社会 [book]

社会における人の名前の位置付けについての論考集。
家族史学会のワークショップの報告をもとにまとめたものらしい。

内容は人類学の観点からの報告が主体となっていて、日本をはじめ、中国、
韓国、イヌイットなどの比較人類学的な論考にくわえて、法制度などの観
点からの論考もおさめられていた。

とくに、近世日本から近代にかけての名前制度の変遷は、われわれの現代
日本の名前制度につながるものであるので、興味深かった。つまりは国家
が規定する名付け文化の変遷であり、伝統社会の文化が消えたり、変容し
ていく様子がまざまざと述べられていて、近代以降の名前文化がかなりの
程度、国家の手による恣意的な運用の中にある所産であると実感した。
これが単なる日本固有の事象ではなく、全く異なる文化にあるカナダのイ
ヌイットたちでも同様の傾向はあるなど、比較人類学特有の観点から、様々
な名前・名付け文化について考えさせられる。

いずれにしろ「人の名前とは何か?」という本質を考えるには、ちょうど
良いものだったと思う。

『人名の世界地図』[2008-04-15-1]、『名前と人間』[2008-05-09-2]と読
んできた人名関連書のなかでは、もっとも専門的な内容で参考になった。

2008-05-14 Wed

* おもてなしの経営学 [book]

IT・ソフトウェア産業における経営戦略の差といったものを、様々な角度
から述べている。

著者はマイクロソフトでWindowsやInternet Explorerの基本設計に関わっ
た技術者で、現在はUIベンチャー企業を運営している。

著者は「User Experience」の新しい訳語として「おもてなし」を提唱し
ていて、前半では「おもてなし」をキーワードとして、新しい技術革新や
サービスの提供が、革新的なユーザ体験をもたらすことの意義を解説して
いる。
「おもてなし」の視点による解説は興味深いが、前半の記事のうち半数く
らいは著者のブログからの抜粋で、かなり断片的で、考察結果の提示とい
うよりは単なる仮説の提示といった趣き。。。
著者のブログを読んでいたので、逆にあまりおもしろく感じられない。
cf. http://satoshi.blogs.com/

後半は、古川氏や望田氏との対談記事から構成されているが、古川氏との
対談が意外と面白かった。
特に、1980年代のアスキー時代からの昔話では当時のコンピューティング
環境でのエキサイティングな前進の様子がうかがえ、1990年代のマイクロ
ソフト内部での戦略についての裏話が興味深かった。

2008-05-13 Tue

* 効率が10倍アップする新・知的生産術 [book]

知的生産性を上げるための方策として主に5つの方針をあげて、それぞれ
の技法を解説。

ノートPC・無線LAN環境をつかい、Googleメールといったデジタルツール
を前提とした知的生産の技法や、万歩計や体重測定器をつかった体調管理
など、現在の先端的な技術を活用した生産性向上のための著者自らの工夫
を述べているのが特徴的。

記述は明確で、例も豊富で分かりやすい。
参考文献がその都度あがっている点も良い。
エキスパートによる「フレームワーク」を使った情報のまとめかたなどは、
とても参考になる。
あと、「本の執筆は自己実現」という言葉は、それを果たした人ならでは
の印象深いものを感じた。

研究業で必要とされる問題解決のスキルは、著者の言う知的生産そのもの
なのか、普段に自分が無意識におこなっている情報行動を言語化されてく
るような感覚も一部でおぼえた。

多々ある提案のうち、自分があまりやっていないことで意識したほうがい
いかなあと思ったのは、人脈作りのあたり。もう少し積極的になってみる
のもよいのかなあ。
英語学習も最近はさぼっているので、再開したほうがよいかも…。
あと携帯端末も良いものを買ってみると良いかも(金を惜しまず…)。
禁酒はやる気にならないので却下だけど。。。

なお、解説している対象は、単なる情報利用のためのツールという観点だ
けではなく、生活・健康管理まで多岐にわたる。このため逆にながめてい
て気になったのは、「何のための生産性向上か?」という点。著者自身は、
情報アナリストという職務上の要求と、ワーキングマザーとしての制約が
いやおうなく徹底的な生産性向上をめざすキッカケになったと述べている
が、逆に言えば、そういった環境に無いのであれば、なにゆえ知的生産性
を向上することが必要なのかという観点は個々の環境において考えなけれ
ばならない点であるように感じた。

これは結局のところ「人生の目標」に何をおくのか?という疑問だろう。
これをきちんと消化しないと意識的な生産性向上という課題には取り組み
づらいのではないかなあと感じた。
個人的にはこの問題が単なる優先順位を付けるような話でよいのか、そう
ではないのか、うまく消化できなかった。検討すべき課題であるのは確か
だが…。

なお、対象としている読者は職業人を対象としているようだ。
特に金銭感覚についての解説はかなり無理があるように思う。5000円以内
の本は飲み会に行ったと思って、迷わず買えというようなアドバイスは、
学生さん相手には非現実的だろう。このあたり、学生のころの自分が読ん
だら、違和感を抱くであろう箇所が多々。。。
まあ、こういった価値観の部分は、すんなり共有できるようなものならば
苦労はしないのだろうが。。。

2008-05-10 Sat

* 図書館革命 [book]

『図書館戦争』シリーズ4作目。完結編。

良化法の影響が作家にまで及ぶというストーリーをもってきたが、今まで
のシリーズ内の流れからすると、かなり強引なラブコメの展開のように感
じた。
ベタなライトノベルの雰囲気全開で、やや苦手な雰囲気だった。

図書館の存在はこれまでのシリーズ中でもっとも薄く、図書隊を舞台とな
る必要もなさそうに思う。

エンディングにもっていく影響なんでしょうか。。。

2008-05-09 Fri

* 名前と人間 [book]

先月[2008-04-15-1]に読んだ「人名の世界地図」の記述がどうにも中途半
端だったので、その参考文献として挙げられていた本を読んでみた。

前半は、言語学的観点から固有名詞と普通名詞の意味(セマンティクス)
といった話題に触れ、後半では一転して名前学 onomatology という観点
から見た、諸言語におけるオトと名前の意味について述べている。終盤の
方はかなりおもしろおかしくエッセイ風のノリになっているが。。。

人名の例としてモンゴル語、ロシア語などを中心に取り上げているのが、
特徴とおもえる。

2008-05-08 Thu

* 妻たちの二・二六事件 [book]

昭和を代表するクーデター事件、二・二六事件に関わった当時の青年将校
の家族に注目し、21名の決起者のうち、14名の未亡人たちのその後の人生
までを描いたノンフィクション。

遺書や手紙、当事者らの証言を通じて、個々の家族たちの絆や人生が垣間
見える。

この本のもっとも良い点は、著者自らの政治的な立ち位置や主張を排して、
徹底して家族や一人の女性の物語を描いている点。

戦前・戦中・戦後を通じて、逆賊/クーデター犯として刑死した者たちの
遺族にも、厳しい人生が待っていたことがよく分かる。とくに、新婚や、
子どもが産まれたばかりの者も多く、その後の人生はかなり過酷だったよ
うだ。

その点、青年将校たちの甘さ、流されてしまった弱さが際だつものとなっ
ている。
(結局、彼らがもっとも訴えたかったはずの軍上層部が彼らの行動を都合
のよいように軍部勢力の拡張に利用してしまったのも、かなり皮肉なもの
として描かれている…)

2008-05-07 Wed

* クライマーズ・ハイ [book]

日航機墜落事故を題材に、主人公の地方紙記者が山と事故取材に抱く思い
を描く小説。

素晴らしい出来。

なにより日航機墜落事故の当時の様子がありありと伝わってくる。

私自身でも読みながら、岩手の祖父母の家でのんびりで夏の甲子園大会を
テレビ観戦しながら、緊急速報とニュースの異様な口調に緊張を感じた、
あの夏の日を思い出した。
圧力隔壁という言葉のとびかう、HNKスペシャルのあの放送を思い出した。
兄のいない、あの夏の日を、思い出した。

解説・著者紹介によれば、著者は当時の群馬地方紙の記者となっており、
舞台設定そのままの現場を垣間見たものと思われる。

著者の総決算といった雰囲気を感じた。

2008-05-06 Tue

* 下天は夢か [book]

津本陽による、織田信長の生涯を描いた時代小説。

前から一度読んでみようとおもいきや、GWの帰省時のためにまとめて読ん
でみた。

独特の名古屋弁そのままのセリフまわしが印象的で、ちょうど帰省先での
方言と類似した部分もあり、工夫のあとを感じた。

中盤あたりから史料からの引用が多用される文体になり、性格描写やセリ
フまわしによる展開なども減ったため、小説そのものとしてのおもしろみ
は薄れるような印象を受けた。最後の本能寺についてもかなり淡白な描写
でほとんどあっけないような幕切れで、やや残念。

巻末の著者解説などを見ると、日経新聞での連載小説として書かれたとの
ことで、かなり苦心したとの著者の弁。
上記の印象も、連載小説ならではの余裕のなさからくるものか。。。