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book - まさおのChangeLogメモ

2009-02-18 Wed

* 人は意外に合理的 [book]

行動経済学の観点からのホモ・エコノミクス批判批判ではなく、人の行動
において合理的な説明がつくものとして、インセンティブによる行動変化
と社会構造との要因から説きおこしている。恋愛行動から、貧困や差別と
いった深刻なものまで射程に入れた論を展開している。

冒頭のポーカーを例にとったゲーム理論からの応用事例は初耳で、とても
面白かった。

ほかの個別事例に関しては大きなインセンティブを説明しようとしている
が、かなり大胆な推論によるとの感が否めず…。本文中でも何度か参照さ
れているが、数年前に読んだ『ヤバい経済学』と類似の内容に読めた。
Referrer (Inside): [2009-02-28-3] [2009-02-20-1]

2009-02-13 Fri

* インターネット市民スタイル [book]

社会学系リソースサイト「ソキウス」を運営する著者が、黎明期インター
ネットにおける市民としてのあり方を実践的に教える本。
cf. http://www.socius.jp/ (Socius ソキウス)

1997年初頭の出版ということで、fjやネチケットなど、この時期のインター
ネット解説書に見られる懐しい記述はさておき、「インターネットでの市
民」とは何か、どのような社会がありうべきかという命題を提示する試み
のように思える。

個人的には、PUS(Public Understanding of Science)を超えるWeb情報
共有のインセンティブ論に対する、自分なりの結論めいたまとめが欲しい
との思いがここ数年あったのがきっかけで読んでみた。
というか、ARGの岡本氏が昨年夏の社会心理学会のシンポジウムで「なぜ
(研究者は)語るのか」という印象深い講演をしていたときに、そういっ
た類似のテーマをまとめた論考が無かったか講演後にお聞きした際に薦め
ていただいたのが直接のきっかけなのだが…。
いずれにしろ、ようやく読んでみた(絶版本らしく図書館から相互貸借)。
cf. http://d.hatena.ne.jp/arg/20080707/1215358835

そういったテーマの点からすれば、やはり本書は原点に近く、「市民」概
念というエッセンスを取り出してみれば、かなり本質を突いた論点を提示
しているとの感は確かにあり、感銘を受けた。
cf. 本書の考察部分は以下でも公開されていた:
http://socius.jp/on/01.html

このような鋭い論考を見ると、インターネット参加ということの本質は
Web1.0時代(もしくはWeb以前)から変わっていないのではないかという
感を強くする。逆に、Web2.0風に「ユーザ参加型」と銘打つことが、本書
で説くような市民社会の本質を見えづらくしてしまっているのではないか
との危惧も覚えた。
…技術の進歩と市民社会の進歩とは必ずしもイコールではないので、当然
のことなのだろけど。。。
Referrer (Inside): [2009-02-28-3]

2009-02-10 Tue

* これまでのビジネスのやり方は終わりだ [book]

インターネット上での対話、それもうわっつらだけの一方的なスピーチで
ない、本音からの双方向的な対話がネットを介した消費社会でも基本的で、
重要なものとなるというテーゼをぶちあげた、クルートレイン・マニフェ
ストなる宣言を基にしたムーブメントからの提言をまとめた本。

マーケティング部門などに関わった著者らが別々に各章を書いているが、
企業文化の悪しき側面を伝える経験を書いているのが印象的に思えた。

日本で言えば、「オトナ語」とでもいうような、大仰な社用人しか使わな
いような言葉遣いがあるが、あれに類するような、不自然な言い回しによ
る企業文化が個人を尊重するようなインターネット文化との対極にあると
言いたいようだ。

マーケティングの世界はよく分からないので、その世界の一側面を垣間見
るという意味というでは、すこしだけ興味深い。

ただ、2000年初頭の出版ということで、今となっては古い批判、プッシュ
技術に対するものや、Web広告に見られるような若干外れかかっている予
測があったりして。。。それはそれは興味深いが。

2009年の時点で一つだけ言えるのは、このムーブメントそのものは、それ
ほど盛り上がらなかったということかな。Web2.0がそれを覆い隠したのか、
それとも、この種の技術を根に置かない原則論の難しさということか。。。
あらためて考えてみると著者らの側も逆に大仰なことを言っている面もあ
ると思うので、主張点そのものに整合性があるとは思わないけれども、主
張そのものがかならずしも無意味とは思わないし、言っていることは楽し
いことなのだろけど、、、という感じ…。
Referrer (Inside): [2009-02-28-3]

2009-02-05 Thu

* グーグルとウィキペディアとYouTubeに未来はあるのか? [book]

原題が『Cult of Amateur』とあるとおり、Web2.0の特徴の一つとされる
「ユーザ参加型」のコンテンツサービスが、既存の専門家・プロの蓄積を
無視した暴挙だと指弾する本。アンチWeb2.0。

AOLの検索ログ公開時の騒動やMySpaceでの実態など、日本ではあまり話題
にならなかったものについて、細かい描写があるのが意外と助かる。

一部に見るべき鋭い指摘もなくはないが、残念ながら、逆に、なぜプロで
なければならないのか?という前提の部分が示されず、かなりいい加減な
議論となってしまっているように思えた。一部には文体の影響もあるだろ
うが、言い回しが独善的で、逆に、専門家カルトとでも言ってしまいたげ
な、雰囲気もなくはない。皮肉を言えば、著者自身があとがきで述べてい
るとおり、著作業のアマチュアによる作品であったということなのだろう…。

あと、「アンチWeb2.0」との意図での出版であるのであれば、もう少し早
く出版するべきであったかもしれない。。。
Referrer (Inside): [2009-02-28-3]

2009-02-03 Tue

* 閉じられた履歴書 [book]

新宿で売春婦・風俗従事者を対象とした福祉・生活扶助事業に携わる婦人
相談員を長年勤めてきた著者が見聞きした体験をもとに、売春婦たちの生
い立ち、性産業などの様子を赤裸々に描いている。

特に、借金、薬物、ヒモ、やくざがからみあった、凄惨な性搾取の様子を
描き切っている。

また歴史的にも、戦後の売春禁止から赤線廃止以降の性風俗の変遷もある
程度つかめるような内容になっている。廓、赤線、キャバレー、ソープラ
ンド(当時はトルコ風呂)、マッサージへと移っていきながら、著者自身
の30年あまりの苦闘の経過を描くとともに、そこにいる人々のある意味で
の変わらなさと悲哀がよく出ている。
Referrer (Inside): [2009-02-28-3]

2009-01-25 Sun

* 野火 [book]

ドイツ行きの機中にて読了。
先日来読んできた大岡昇平の『レイテ島戦記』[2009-01-09-1]、『俘虜記』
[2009-01-25-1]とシリーズをなすような著者の戦場体験が色濃く出た小説。

敗兵のうちの落伍兵を主人公として、ゆるやかな死に向かう中での狂気を
描く。餓死・病死による脱落者が大量に出現した中での人肉食者を主題と
して、極限での罪の意識を描いている。

これまで読んできた大岡昇平の戦場ものシリーズからすると、唯一フィクショ
ンものであることもあり、もっとも幻想的な雰囲気がある。が、いままで
に他のものを読んでからだったから、意外と文体も変わらず、それまでの
雰囲気のままで読むことができた。
Referrer (Inside): [2009-01-31-1]

2009-01-25 Sun

* 俘虜記 [book]

ドイツ行の機中にて読了。
先日[2009-01-09-1]に読んだ「レイテ島戦記」と対となるような、筆者自
身の経験にもとづく私小説的性格の本。

筆者の市民的日常に立ち戻ることはなく、捕虜としての虚脱感と米軍の豊
かさの下での捕虜社会の人間模様をこまかに描いている。レイテ戦記に見
られたような惨状と緊張の連続から一転して、微妙な退屈に支配された不
自由さが描かれている。
Referrer (Inside): [2009-01-31-1] [2009-01-25-2]

2009-01-24 Sat

* 続・鉄の文化史 [book]

文字通り、先日[2009-01-21-2]に読んだ『鉄の文化史』の続編。

前編と同様、論集という形式で洋の東西を問わず様々な対象についての記
事が並んでいるが、先日のものよりも構成にまとまりがあって、読みやす
い。こころなしか、執筆者も豪華な感じに見える。

前編・後編あわせての感想として、鉄の研究というと、自然科学めいたも
のしか想像できないことがあるけど、これらの論集は主に考古学や民俗学
の研究者が主体となって、人文科学としての鉄利用の研究に取り組んでい
るのが印象的。記事中でもふれられているように、これらの論集に登場す
る研究者を主体とした研究会など、いくつかの研究コミュニティがあった
ことが分かるのも興味深い。
Referrer (Inside): [2009-01-31-1]

2009-01-21 Wed

* 鉄の文化史 [book]

ヒッタイトから始まる鉄の利用に関する論集。
新日本製鐵の広報誌掲載記事をまとめたもの。

先日[2008-12-28-1]に読んだ『金属物理博物館』が面白かったので、その
続きとして読んだ。

ヨーロッパから日本へ、太古刀から幕末の大砲製造まで、題材も豊富で楽
しく読めた。
Referrer (Inside): [2009-01-31-1] [2009-01-24-1]

2009-01-21 Wed

* 38℃ [book]

SARSアウトブレイクに見舞われた北京の医療関係者の取材により書かれた
ノンフィクション。

図書館で見かけて思わず手にとったが、引き込まれるような迫力があり、
そのまま読み切ってしまった。

戦場となった第一線で院内感染をひきおこしながらも、献身的に従事した
医者、看護婦たちなどの姿を中心に取り上げている。

なかでも正体不明のウイルスに対する情報がキーとなっており、医師たち
もインターネットで情報収集にあたっていたとの報告にはハッと考えさせ
られるものがある。

最後の解説文にて、中国の問題としてではなく、日本において同様の現象
が起きた場合にはどうすればよいかを考えたほうがよいとの言葉に感銘を
受けると同時に、それへの対応ができてはいないとの指摘にはぞっとする
ような思いに襲われた。
Referrer (Inside): [2009-01-31-1]

2009-01-20 Tue

* 自閉症裁判 [book]

「レッサーパンダ帽の男」という描写で知られる通り魔事件の犯人が高等
養護学校を出た自閉傾向の障害を持っていたことからくる困難と、司法制
度の矛盾や限界を描くノンフィクション。

著者は元養護学校教員という経歴をもつジャーナリストで、その立場から
聴取や裁判制度の両面からの理解の難しさを率直に示している。

以前に山本譲司が「累犯障害者」で述べたように、触法障害者への無関心
さが、どう向き合うかという難しい問題を覆い隠してしまっているという
課題があらわれているように思う。
Referrer (Inside): [2009-01-31-1]

2009-01-19 Mon

* マーケティングの神話 [book]

長年マーケティング活動および学問体系の構築にたずさわってきた著者が、
マーケティング学および実践の難しさを解説する本。

前半はマーケティング活動のなかで見られる不可逆性について触れ、消費
者はまだ見ぬサービスに対しては明確な価値軸を提供できないし、マーケ
ティング活動もそれにはアプローチできていないとの認識を示したうえで、
後半では、質的研究やエスノメソドロジーを含むような学際的な学問のあ
り方を考えるべきといった、「マーケティング学の脱構築」をキーワード
として、科学哲学まで踏み込むような議論を展開している。とくに「科学
はマーケティングか?」との章では、倒置的な問いをキーワードにして、
パラダイムとしての科学論を展開している。

また経営資源に対する日米の認識の違いとしてあげられた、「合理性の米
国」「現場でなんとかする日本」という対比も、とても面白い指摘だった。

もともと1980年代に出版されたもので古めかしい内容もあちこちにあるが、
マーケティングや消費者研究そのものは素人なので、解説書・入門書とし
て楽しく読めただけでなく、逆に分野違いだからか新しさを感じる面もい
くつかあった。

また内容的にも、CRESプロジェクト研究で取り組んでいるような、コンテ
クスト重視の研究という点でとても興味深く、深く関連しそうな部分も多
いので、最新の研究解説を追いかけて読むべきと強く思った。
Referrer (Inside): [2009-01-31-1]

2009-01-13 Tue

* ウィキペディア革命 [book]

フランスのジャーナリストである筆頭著者を中心に、ウィキペディアのも
つ側面を指摘する本。

ジャーナリスト養成校で教鞭を取る著者が、「Wikipedia無しでどうやっ
て調べてきたのですか?」と教え子に聞かれて衝撃を受けたとのまえがき
から始まる。これまでの先人たちの取材や蓄積が継承されなくなってしまっ
ているのではないかとの危機意識から、ウィキペディアと既存のメディア
との違いに焦点をあてつつ、様々な角度から、著者の教え子たちのレポー
トをもとに話題が展開する。

各章の話題の大半はフランスでの事例を元にしており、フランス語版ウィ
キペディアもしくは英語版ウィキペディアからの引用となっているが、そ
れを補うようにして加えられた木村氏による解説は日本語版ウィキペディ
アを対象としたものであり、とても分かりやすい。前半でのフランス人著
者らの筆致に比べるとかなり冷静で正確な記述となっており、日本語版ウィ
キペディアの実態によりよく迫る解説となっているように思う。

印象から言えば、フランス人著者らのウィキペディアへの態度は、かなり
批判的であり、悪く言えば、いかにも文化人めいた教条的な批判が主となっ
ており、あまりかみあっている印象を与えないのが難点であり、迫力に欠
ける部分が多々見られる。

この本の収穫は2点あり、一つは圧倒的な存在感を放つ木村氏による日本
語版ウィキペディアの解説であり、もう一方は、原著者らによる率直な危
機感の露呈だと思う。

なにより、木村氏の解説は、これまで誤解の多かった日本語版ウィキペディ
アの内実をよく表現しており、これまでに読んだウィキペディア関連の解
説の中でも、もっとも実態に迫る白眉の内容となっている。とくに、単な
るウィキペディアの機能面の解説ではなく、ウィキペディアの持つ自治的
空気の中でのコミュニティ活動の本質に迫っているし、内部から見た部分
とも良く整合するかなり正確な内容であることに正直言って驚いた。惜し
むらくは、全体の原著者らとのトーンとはまったく180度ことなる内容で
あり、もったいない、別の著作としても良いのでは、との感も覚えるほど
であった。
Referrer (Inside): [2009-01-31-1]

2009-01-11 Sun

* われらが歌う時 [book]

アメリカの人種問題の間隙を追うような小説。

ユダヤ系白人の父と黒人の母とを持つ混血の天才歌手兄弟を主人公として、
複数の時間軸と視点にわたりながら、アイデンティティと時代性のテーマ
の双方をうまく活かした小説だった。

オバマ大統領との関連で推されているのを見て、読んでみた。確かに、時
代背景、人種間の問題など、オバマ新大統領の境遇とも似た感じもあり、
かなり興味深いのは確かか。。。
cf. http://d.hatena.ne.jp/zoot32/20080826

残念ながら、音楽や声楽に関する記述の多くには理解不能な面も多いが、
全体の疾走感に圧倒されながら一息に、すなおに楽しむことができた。
Referrer (Inside): [2009-01-31-1]

2009-01-09 Fri

* レイテ戦記 [book]

大岡昇平による、太平洋戦争中のレイテ島における日本軍と米軍との戦い
を描いた戦記小説。戦死した兵士たちへの鎮魂歌とするかのように、レイ
テ島での日本軍全滅に至るまでの経過を細かく描いている。

レイテ島から終戦にいたる日米双方の戦略の対比とともに、レイト島内に
おける個別の局地戦闘まで、ミクロとマクロの視点両者をよく盛り込んで
あって、興味深く読んだ。

とくに、個人的には、祖父の兄が海軍士官として南方戦線の輸送船で戦死
したと聞いたことがあるため、日本軍の増援作戦での輸送の実態の説明は
特に興味深く読んだ。

結論から言えばレイテ島での日本陸海軍は9割以上が戦死し、一部の転身
部隊数百名をのぞいてはおおむね全滅となり、帰れずに補給も尽きた島で
餓死するしかなかった戦死者が多数いたという凄惨な経過を、当時の米国
公刊戦史と日本に残された公文書、数少ない生還者の手記、残された無線・
電報伝令等の記録をもとに、一部隊ごとの経過を明らかにしている。特に
後半の潰滅状態に近い敗走中の記述は圧巻で、両軍の体質とともに、個々
の部隊における人間と狂気じみた戦争のありようが伝わり、ただただ悲し
さとむなしさをかきたてられるような思いに駆られた。

また随所で、指揮官や士官たちの無責任さととも、自己弁護めいた記録の
微妙な食い違いといった点に言及している著者の史料調査の観点からの指
摘も興味深い。

ただ、本書は戦記スタイルによって書かれたものであるため、部隊もしく
は指揮官・参謀レベルの説明が主となっていて、個別の前線の兵士たちの
主観的説明を排したかたちになっているため、合わせて著者の他の著作も
見るべきかもしれない、、、とは思った。

2008-12-28 Sun

* 地球最後の男 [book]

今年、ウィル・スミス主演で『アイ・アム・レジェンド』の邦題で公開さ
れたハリエッド映画の原作。

1970年代のかなり古いSF小説で、舞台もアメリカのありがちな郊外都市を
舞台にしているけれど、ホラー感覚を混じえた風味は古さを感じさせず、
優れた短編作品といった趣きを感じる。

DVDレンタルの宣伝でウィル・スミス主演の方の予告編だけを何度も観さ
せられて気にはなったのだけど、かなり設定依存な雰囲気があったので、
原作だけ読めば十分かな…という意味で読んでみたが、たしかにまあ映画
はもう観ないでもよいかな、、、という気がする。

2008-12-28 Sun

* 金属物理博物館 [book]

古今の金属物理の実践と理論を平易に解説した入門書。

人と金属のつながりという観点から、石器・青銅器時代の原初期から説明
をはじめ、中世の錬金術に至るまでの金属加工技術の発展を追い、近代科
学に入ってからは、各種理論・分野を幅広く解説している。

なにより各国の科学者の個性に触れながらの解説によって、とても楽しげ
な科学研究のプロセスを語っており、その中に理論・原理の解説を混ぜる
というバランスに優れた良書のように思う。

「初学者にも…」とある通り、専門的な箇所はかなり読み飛ばしたものの、
門外漢の自分でも楽しく読めた。
Referrer (Inside): [2009-01-21-2] [2008-12-31-1]

2008-12-24 Wed

* 「使い勝手」のデザイン学 [book]

日常にありふれる日用品を題材に、制約の中で行われるデザインのあり方
を解説した本。

特にヒトの生物的・物理的特性と向き合う必要性にも意識的で、数々の事
例紹介とともに教えてくれるのがとても参考になった。

人間の行動の大半には何らかのデザインが絡んでいるので、わたしたち
は、デザインに何がついてまわるかを本能的に知っている。九時になら
ないと放映しない番組は八時には見られない、と承知している。テレビ
を二台並べるか、手持ちのテレビに子画面表示の機能がついているかし
ないかぎり、いちどに二つの番組を見られないのを知っている。たとえ
その技術的な能力をもっていても、本当の意味で二本のミステリー映画
を同時に見て、両方の筋書きをきちんと把握しつづけることはできない
とわかっている。選択の必要性と、それを避けようとするのにかかる代
価を理解している。音量を、眠っている赤ちゃんに聞こえないほど小さ
く、しかも自分たちが耳をそばだてたり、肝心のせりふを聞きのがした
りせず番組を聞いていられる程度に大きくすることはできないと知って
いる。テレビを見るというような、ごくありふれた行為の本質を理解し
ているからこそ、わたしたちはデザインの本質がわかり、完璧を達成す
ることの難しさがわかる。完璧なものが何もないというのは、デザイン
に対する批判ではなく、その原因が人間にあると認めることにほかなら
ない。
(p.19より引用)
Referrer (Inside): [2008-12-31-1]

2008-12-15 Mon

* 恋する天才科学者 [book]

著名な科学者の伝記だが、「家庭生活」という軸から科学者たちの習性を
浮き彫りにしようという試み。科学における成果に対して人格的な特性が
どのように貢献したかが明らかになる!? (本当か??)

以前読んだ「キュリアス・マインド」の大人読者向けといった編集意図か
と思う。

あくまでも歴史上の科学者だから良いようなものの、存命の人物であった
なら、こういった批評はできないだろうな、という気はする。研究コミュ
ニティの中でのどろどろの女性関係というのは、聞かないこともないので、
欧米だったら本人原稿として書かせてみるという手もあるかもしれんが…。

おもわず、身の周りでも連休中にばんばんメールが飛んできて、家庭生活
は大丈夫かしらん?と心配してしまったのを思い出した、のは内緒。。。
Referrer (Inside): [2008-12-31-1]

2008-11-27 Thu

* グーグル八分とは何か [book]

Googleの検索対象から外されるグーグル八分の現象を解説した本。
著者は有名なサイト「悪徳商法マニアックス」の管理人で、自身のサイト
が悪徳商法がらみの事業者によりグーグルに申請された情報をもとに検索
から除外されたことをキッカケにこの現象の解明と、グーグル批判を展開
している。

初期のころはGoogle Danceとも間違えられやすかったグーグル八分現象だ
が、著者独特のいわば悪徳商法対策的な観点から、Googleの不可解とも思
われる法的立脚点を解説している。
Referrer (Inside): [2008-11-30-2]